卵子を採取して冷凍保存しておき、将来の出産に備えるという医療サービスが30代以上の女性たちの間で話題になっている。
日本生殖医学会が健康な独身女性の「卵子の凍結保存」を容認するガイドライン案を公表するなど、卵子凍結の認知度やニーズは高まっているが、金銭面での負担はハードルとなる。
卵子凍結は自由診療になるのでクリニックごとに異なるが、東京新宿の「リプロセルフバンク」の場合で、初期費用(提携先の婦人科での初診から入院・全身麻酔・採卵、同社での卵子凍結、初年度1年間の凍結卵子の輸送・保管管理費用)が、70万~100万円。2年目以降は卵子1個あたり1年間の保管料が1万500円である。
同社では、妊娠・出産の成功率は年齢によって差があるものの、平均で10%ほどとし、最低でも卵子10個以上を採取・保管する。仮に10個であれば、年間の保管料は10万5000円となる。卵子を解凍して体外受精を行なえば、その分の料金もかかることになる。
同社は現在、20代後半から30代後半までの女性15人の卵子を保管しているという。
「うちでは初めから40歳以上の方はお断わりしてきたので、生殖医学会が『卵子(卵巣組織)採取時の年齢は40歳以下が望ましい』と指針を示したのはいいことだと思います。
ただ、ガイドライン案では、倫理的なことしか規定していないので、技術面の規定を入れるように働きかけるつもりです。
卵子の凍結保存は決して簡単な技術ではない。5年、10年経って解凍したら卵子が死んでいたというのでは不幸を巻き起こすことになりますから」(同社代表の桑山正成氏)
技術レベルの低いクリニックでは、そういったリスクもあるのだ。
※週刊ポスト2013年9月13日号