ライフ

輸入もの松茸で国産に劣らない風味を甦らせる下ごしらえ方法

 NHK『きょうの料理』『あさイチ』でおなじみの“ばぁば”こと料理研究家・鈴木登紀子さん(89才)が、秋の味覚の代表ともいえる松茸を使った美味しい料理を伝授する。

 * * *
 お料理教室を初めてかれこれ50年。その時期の“国産の旬”に心をくだいてまいりましたが、いよいよ今年は、白旗を上げることになりそうな食材がございます。

 それは松茸。昔は秋の訪れとともに国産の松茸が一斉に出回り、スーパーの野菜コーナーでも誇らしげに鎮座しておりましたが、ここ数年、国産松茸の収穫は激減、目が飛び出るような高価なものになってしまいました。お教室では、昨年まではなんとか国産ものを使っておりましたが、今年はどうなりますことか…。

 しかし、松茸をあきらめる必要はございません。国産ものがダメなら輸入で…と、世界中から日本に松茸が届くようになりました。お値段も手頃ですし、ちょっと上等のきのこを買うような気安さで購入できます。

 なかでも北欧産の松茸は、日本のものと性質が似ているとかでお味も悪くないといいますし、カナダ産のものもなかなかのもの。かえって松茸が気軽に楽しめるようになって、結構なことだとばぁばは思います。

 ただ、国産と決定的に違うのは、あの独特の香りと風味。これは致しかたないことなのですが、長旅を経るため鮮度が落ちますし、普通は洗わないきのこ類も、輸入ものは法律で洗浄する決まりになっておりますために、風味や香りがガクリと落ちてしまうのです。

 そこで、ばぁばの秘策をお教えしましょう。下ごしらえの際のひと手間で、国産ものにも劣らない風味が甦りますよ。

 まず、松茸を買ってきましたら、根元の石突きを鉛筆を削るようにそぎます。次に水で濡らして固く絞ったガーゼで笠をペタペタとやさしく押さえながら、汚れを落とします。この時、笠を覆っている薄~い衣をはがさないように、くれぐれもやさしくね。

 松茸がきれいになったら、薄切りにします。バットなどに並べ、(松茸1本につき)お酒を大さじ3ふって、5分ぐらいそのまま寝かせます。こうしますと、あら不思議。あの松茸の芳香がふわりと甦るのです。

 そのまま網でさっと炙り、すだちを絞っていただいてもおいしいですが、松茸といえば、やはり土瓶蒸し。

 筋を取ってそぎ切りにし、塩・酒各少量をふった鶏ささ身、背わたと頭を取ってゆで、殻をむいたえび、薄切りにしたかまぼこ、ぎんなんとともに松茸を器に等分に入れ、塩と薄口しょうゆでお味を調えた温かいだし汁を注ぎます。

 焼き網にのせてひと煮立ちさせ、酒小さじ1ずつをふって、ざく切りにした三つ葉適量と半割にしたすだちを添えます。

 ほ~ら、なんともいえない松茸のよい香りが鼻をくすぐりますでしょう? 帆立ての炊き込みご飯など、シンプルなご飯ものとよく合いますよ。ハレの日のおごちそうに、ぜひどうぞ。

※女性セブン2013年10月3日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

全国でクマによる被害が相次いでいる(AFLO/時事通信フォト)
「“穴持たず”を見つけたら、ためらわずに撃て」猟師の間で言われている「冬眠しない熊」との対峙方法《戦前の日本で発生した恐怖のヒグマ事件》
NEWSポストセブン
韓国のガールズグループ「AFTERSCHOOL」の元メンバーで女優のNANA(Instagramより)
《ほっそりボディに浮き出た「腹筋」に再注目》韓国アイドル・NANA、自宅に侵入した強盗犯の男を“返り討ち”に…男が病院に搬送  
NEWSポストセブン
ラオスに到着された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月17日、撮影/横田紋子)
《初の外国公式訪問》愛子さま、母・雅子さまの“定番”デザインでラオスに到着 ペールブルーのセットアップに白の縁取りでメリハリのある上品な装い
NEWSポストセブン
ドジャース入団時、真美子さんのために“結んだ特別な契約”
《スイートルームで愛娘と…》なぜ真美子さんは夫人会メンバーと一緒に観戦しないの? 大谷翔平がドジャース入団時に結んでいた“特別な契約”
NEWSポストセブン
山上徹也被告の公判に妹が出廷
「お兄ちゃんが守ってやる」山上徹也被告が“信頼する妹”に送っていたメールの内容…兄妹間で共有していた“家庭への怒り”【妹は今日出廷】
NEWSポストセブン
靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
相撲協会の公式カレンダー
《大相撲「番付崩壊時代のカレンダー」はつらいよ》2025年は1月に引退の照ノ富士が4月まで連続登場の“困った事態”に 来年は大の里・豊昇龍の2横綱体制で安泰か 表紙や売り場の置き位置にも変化が
NEWSポストセブン
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン
俳優の仲代達矢さん
【追悼】仲代達矢さんが明かしていた“最大のライバル”の存在 「人の10倍努力」して演劇に人生を捧げた名優の肉声
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト