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1964年の東京五輪から始まった日本発の「デザイン革命」とは

 オリンピックは選手だけが集まる宴ではない。監督、コーチといった競技を支える裏方、競技場の設計者、施工者、そこにいたる交通インフラを整備した人々……、オリンピックという巨大なイベントを実行するには膨大な数の才能が必要とされる。

 1964年の東京オリンピックでは大勢のトップクリエイターが大会を盛り上げるため力を尽くした。なかでも知られているのは、シンボルマーク、ポスターをデザインした亀倉雄策だろう。彼が作ったポスターはいまも「オリンピック史上、最高傑作」とされている。

 亀倉は東京大会のデザイン統括者に評論家の勝見勝を推薦。勝見は絵文字のサイン「ピクトグラム」を大会のために導入した。世界各国から日本にやってきた観光客が都内や競技場周辺で迷子にならないよう絵文字のサインを制作し、街角や駅、空港に設置したのである。ピクトグラムを大規模に導入したのは世界で初めてのことであり、それは日本発のデザイン革命だった。

 勝見の下でデザインを実作したのが田中一光、杉浦康平、福田繁雄、横尾忠則、永井一正、粟津潔といった後にグラフィックデザイナーの世界で大家となる人々である。他にも往時の大会では岡本太郎、磯崎新、榮久庵憲司(工業デザイナー)、石津謙介、森英恵といった人々が参加している。

 亀倉はまた、記録映画『東京オリンピック』の監督に市川崑を推薦。市川は脚本に谷川俊太郎を起用、キャメラマンに映画『羅生門』などの撮影で知られる宮川一夫ら、当時の一流スタッフが参集した。そうして、できあがった記録映画は1960万人の観客動員を記録し、いまも邦画では歴代2位の記録となっている。

 亀倉のポスター、市川の映画は世界でも評価され、亀倉はワルシャワ、プラハなどで受賞、市川はミュンヘンオリンピックの記録映画を撮る監督のひとりに選ばれた。世界は日本のクリエイターの仕事をちゃんと見ていたのである。

 2020年には再びクリエイターの力が必要とされる。世界の人々に日本の才能を見せる最高の舞台が東京オリンピックだ。

文■野地秩嘉(ノンフィクション作家)

※週刊ポスト2013年10月18日号

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