スポーツ

パラリンピックに「南北問題」 器具の優劣で国別格差あり

 東京では7年後に五輪とともに障害者スポーツの祭典「パラリンピック」も開催される。この大会の意義を深く理解するためパラリンピックが抱える様々な問題を取り上げてみよう。

 車椅子や義足の性能が急速に発達する中、高価な器具を購入できない選手が勝ちにくくなっている。

 障害者スポーツを支えるNPO団体「STAND」代表理事で、『ようこそ、障害者スポーツへ~パラリンピックを目指すアスリートたち』(廣済堂出版)の著者である伊藤数子氏がいう。

「世界トップクラスのハイテク技術を持った日本などの先進国と、途上国の選手では置かれる状況が全く違います。途上国の選手たちは、日本で何十年も前に使用していたような、修理さえできないような車椅子で参加していることもあり、その時点で大きなハンデを抱えている。

 最近、陸上競技で使用されるオールカーボンの車椅子が作られたのですが、余りにも高価であるため国際レースでの使用は許可されないことも多い。道具の進化によって、一部の恵まれた環境にあるパラリンピアンだけが有利になりかねない状況が生まれているのです」

 障害の程度や使用するスポーツによって義手や義足の形状が異なるため、道具の平均的な相場を示すことは難しいが、日本では一般の障害者が使用する義足でも30万~80万円はかかるといわれる。スポーツに使用するものの場合、100万円を超えることも少なくない。

「有名選手などは、テスト用として無償提供してもらえる場合もあるが、あくまでレアケース。また、日常生活用の義足には保険適用があるが、スポーツ用は全額自費負担。消耗品のため大きな負担となっており、金銭的な理由で出場を諦める選手もいます」(パラリンピック関係者)

 ロンドン大会では、五輪での義足使用が議論の的となった前出のピストリウス選手が、200メートル走優勝のオリベイラ選手(ブラジル)の義足を「長すぎる」と非難したことが大きく報じられた。道具の優劣は「第2のドーピング問題」となっているのである。

※週刊ポスト2013年11月8・15日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

『東京2025世界陸上』でスペシャルアンバサダーを務める織田裕二
《テレビ関係者が熱視線》『世界陸上』再登板で変わる織田裕二、バラエティで見せる“嘘がないリアクション” 『踊る』続編も控え、再注目の存在に 
NEWSポストセブン
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
【七代目山口組へのカウントダウン】司忍組長、竹内照明若頭が夏休み返上…頻発する「臨時人事異動」 関係者が気を揉む「弘道会独占体制」への懸念
NEWSポストセブン
カザフスタン初の関取、前頭八・金峰山(左/時事通信フォト)
大の里「横綱初優勝」を阻む外国人力士包囲網 ウクライナ、カザフスタン、モンゴル…9月場所を盛り上げる注目力士たち10人の素顔
週刊ポスト
不老不死について熱く語っていたというプーチン大統領(GettyImages)
《中国の軍事パレードで“不老不死談義”》ロシアと北朝鮮で過去に行われていた“不老不死研究”の信じがたい中身
女性セブン
会話をしながら歩く小室さん夫妻(2025年5月)
《ベビーカーショットの初孫に初コメント》小室圭さんは「あなたにふさわしい人」…秋篠宮妃紀子さまが”木香薔薇”に隠した眞子さんへのメッセージ 圭さんは「あなたにふさわしい人」
NEWSポストセブン
59歳の誕生日を迎えた紀子さま(2025年9月11日、撮影/黒石あみ)
《娘の渡米から約4年》紀子さま 59歳の誕生日文書で綴った眞子さんとまだ会えぬ孫への思い「どのような名前で呼んでもらおうかしら」「よいタイミングで日本を訪れてくれたら」
NEWSポストセブン
試練を迎えた大谷翔平と真美子夫人 (写真/共同通信社)
《大谷翔平、結婚2年目の試練》信頼する代理人が提訴され強いショックを受けた真美子さん 育児に戸惑いチームの夫人会も不参加で孤独感 
女性セブン
海外から違法サプリメントを持ち込んだ疑いにかけられている新浪剛史氏(時事通信フォト)
《新浪剛史氏は潔白を主張》 “違法サプリ”送った「知人女性」の素性「国民的女優も通うマッサージ店を経営」「水素水コラムを40回近く連載」 警察は捜査を継続中
NEWSポストセブン
ヒロイン・のぶ(今田美桜)の妹・蘭子を演じる河合優実(時事通信フォト)
『あんぱん』蘭子を演じる河合優実が放つ“凄まじい色気” 「生々しく、圧倒された」と共演者も惹き込まれる〈いよいよクライマックス〉
週刊ポスト
石橋貴明の現在(2025年8月)
《ホッソリ姿の現在》石橋貴明(63)が前向きにがん闘病…『細かすぎて』放送見送りのウラで周囲が感じた“復帰意欲”
NEWSポストセブン
ヘアメイク女性と同棲が報じられた坂口健太郎と、親密な関係性だったという永野芽郁
「ずっと覚えているんだろうなって…」坂口健太郎と熱愛発覚の永野芽郁、かつて匂わせていた“ゼロ距離”ムーブ
NEWSポストセブン
新潟県小千谷市を訪問された愛子さま(2025年9月8日、撮影/JMPA) 
《初めての新潟でスマイル》愛子さま、新潟県中越地震の被災地を訪問 癒やしの笑顔で住民と交流、熱心に防災を学ぶお姿も 
女性セブン