──ところが、小泉氏は考えを覆した。なぜなのか。
森:それがなぜなのかっていうのが、すっぽり抜け落ちてるし、誰に聞いてもわからないんですよ(笑い)。だから、原発推進派も脱原発派も、双方とも混乱していますね。
上杉:一番混乱しているのは安倍さんでしょう。安倍さんは昨年の総理就任前、拙著『官邸崩壊』を読み返してまた怒っていたらしいんです。これは僕の推測だけど、たぶん小泉さんとの関係を書いた箇所が癇に障ったんだと思いますよ。〈安倍内閣は、小泉によって作られ、規定され、そのタクトまで握られていたのだろうか〉って。安倍さんは本当に小泉さんが怖いんです。
安倍さんが官房副長官のころ、旧官邸で番記者たちと談笑していた安倍さんに小泉さんから連絡が入ったそうです。用件はわからないけど、小泉さんに呼ばれたってだけで、安倍さんの様子が一変して、笑顔が消えて急に無口になって、記者たちからの問いかけにも上の空で懇談が打ち切られたことがあったんです。安倍さんにとって、小泉さんは怖いお父さんみたいなものなんですよ、きっとね。そして、実はその関係はいまも全く変わっていない。
森:やっぱりコンプレックスがあるんだと思います。だって、安倍政権には安倍さん個人の人気ってものがないでしょう。総裁選も総選挙も選択肢がほかにないから勝っただけ。いまだって景気がよくなったかのようにメディアが報じるもんだから、何となく政権支持率が高まっているだけで、安倍さん個人の人気ではない。だから、圧倒的な人気を持つ小泉さんが出てくると、みんな突然小泉さんにいってしまうわけでしょう。
メディアは新聞もテレビも安倍政権を叩いてこなかったけど、おそらく政権発足後初めて、政権に異を唱える人物に乗っかり始めている。これは安倍政権にとっては脅威ですよ。
※週刊ポスト2013年12月6日号