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町の書店 傘を売ったり返品しないこと徹底等で経営守る例も

 アマゾンなどネットで本を買ったり、電子リーダーで電子書籍を購入するのが当たり前になりつつあり、書店が減っている。だが、書店はただ本を売るだけではない役割を担っていると、長野県の諏訪中央病院名誉院長でベストセラー『がんばらない』ほか著書を多数持つ鎌田實氏が、近刊『○に近い△を生きる 「正論」や「正解」にだまされるな』(ポプラ新書)の講演会とサイン会が行われた町の本屋さんでの体験を語る。

 * * *
 いまやネットで本を買う人が増え、町の本屋さんは厳しい状況に追い込まれている。ある調査によると、全国の書店数は、今年5月現在で、1万4241店。昨年に比べて455店減った。閉店したのは中小の書店が多い。小さな書店では本がえづらく経営が難しいとか。ベストセラー本は注文してもなかなか届かないのが実態らしい。

 僕は『○に近い△を生きる~「正論」や「正解」にだまされるな』を9月に上梓し、1か月で5刷になった。好調だ。出版社から北海道から九州までの大きな書店で講演会とサイン会をしようと頼まれたが、僕は大きな書店だけではなく、小さな書店にも行ってあげたいと申し出た。

 そしてセッティングされたのが兵庫県尼崎市にある小林書店だった。夫婦ふたりで営んでいる小さな書店で、売り場面積は10坪。サラリーマンだったご主人は本が好きで会社を辞め、奥さんの店を手伝っている。年中無休。経営は厳しいが本屋はやめたくない頑張り屋さんだ。

「町の本屋は文化を支えている」──その心意気に感心した。

 奥さんは週末になると傘を売って生計を立てているという。すごい本屋だ。「傘売りの名人なんです」と自らがいうほど、傘が売れるらしい。僕のサイン会の日は週末。傘売りは休めない。みかねて本の問屋さんがボランティアで駆けつけて傘売りを代行してくれた。

 そんな小さな書店が口コミでこの本をすすめてくれて、180冊が売れた。驚異的な数字である。

「先生の本の坪当たり日本一の売り上げを目指しています」
「講演会とサイン会は、人生最高のプレゼントです」

 そう言って奥さんは泣いた。小さな書店に来てよかったと思った。

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