国内

日本だけ高い被選挙権年齢制限 米国では18歳市長登場の例も

 少子高齢化を食い止めるためにも、出産・子育てに関わる若者の政治参加は欠かせない。しかし、公職選挙法は聖人の20歳ではなく、25歳以上でないと選挙に立候補できない。政策工房社長の原英史氏は、国際的にも日本の基準はバカバカしいと指摘する。

 * * *
 現行の公職選挙法では、衆議院議員、地方議会議員、市長に立候補するには「25歳以上」、参議院議員、知事の場合は「30歳以上」でなければならない、と定められている。

「それぐらいの年齢でないと、社会経験や知識も不十分だから適切なルールではないか」と思う人もいるかもしれないが、実は諸外国と比べるとこの年齢制限はかなり高い。

 OECD諸国34か国を見れば、約半分(18か国)は18歳まで、8割(27か国)が21歳までに被選挙権を与えている。米国では現に18歳の市長が登場した例がある。諸外国の18歳は十分大人だが、日本の24歳はまだひよっこ扱い、ということなのだろうか。

「地方議会に立候補するためには25歳以上」という法規制の根拠は実はあやふやだ。にもかかわらず今回、この提案は実現には至らなかった。理由は担当の総務省が、

●こうした議論は特区にはなじまない。民主主義の根幹に関わる権利である以上、全国一律で定めるべき
●政治の場で慎重な議論が必要

 などと強く主張したためだ。

 だが、「全国一律であるべき」という点については、首を傾げたくなる。たとえばドイツやオーストリアは州ごとに選挙権・被選挙権年齢を定めている。こうした国は連邦制で、州が国に相当するとの反論もあろうが、それならばアメリカの州内では、市町村レベルで選挙権・被選挙権年齢を独自に定めている例がある。またノルウェーでは最近、20市で実験的に選挙権年齢の18歳から16歳への引き下げを行なった。

 また、「民主主義の根幹だから、全国一律」というのも本当だろうか。むしろ地方議会の話なのだから、その地方で決められるようにすることこそ「民主主義の根幹」に沿っているとも考えられる。

 おそらく総務省が慎重だった本当の理由は政治家たちの中にこうした議論への根強い反対があることが分かっていたからだろう。

 つまり、政治家たちの相当数は高齢者世代を支持母体とし、高齢者に支えられて当選している。そして自分たちも高齢だ。彼らにとっては、若者たちが参入してくることは脅威であり、「被選挙権年齢の引き下げ」など、そう簡単には認められない。

 今回の提案は地方議会に的を絞った提案だったが、これが実現すれば将来的には国会議員の被選挙権年齢にも波及していく可能性がある。とすれば、国会議員にとっても他人事ではない。

「被選挙権年齢の問題は政治の話なのだから、政治の場で慎重に」というのは、一見もっともらしく聞こえるが、実は既得権者たちに新規参入規制の是非を論じさせようということだ。農業や医療などの領域で、「新規参入」を制限する規制が強固に維持されている例がある。政治の世界も同じ構図だ。

 逆に若者を参入させて高齢議員の既得権を奪えば、政治参加の幅が拡大するだけにとどまらず、硬直した高齢者重視の政策を脱して日本をダイナミックに変えていける原動力となり得るのだ。

※SAPIO2013年12月号

関連キーワード

関連記事

トピックス

11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(右/読者提供)
【足立区11人死傷】「ドーンという音で3メートル吹き飛んだ」“ブレーキ痕なき事故”の生々しい目撃談、28歳被害女性は「とても、とても親切な人だった」と同居人語る
NEWSポストセブン
愛子さま(写真/共同通信社)
《中国とASEAN諸国との関係に楔を打つ第一歩》愛子さま、初の海外公務「ラオス訪問」に秘められていた外交戦略
週刊ポスト
グラビア界の「きれいなお姉さん」として確固たる地位を固めた斉藤里奈
「グラビアに抵抗あり」でも初挑戦で「現場の熱量に驚愕」 元ミスマガ・斉藤里奈が努力でつかんだ「声のお仕事」
NEWSポストセブン
「アスレジャー」の服装でディズニーワールドを訪れた女性が物議に(時事通信フォト、TikTokより)
《米・ディズニーではトラブルに》公共の場で“タイトなレギンス”を普段使いする女性に賛否…“なぜ局部の形が丸見えな服を着るのか” 米セレブを中心にトレンド化する「アスレジャー」とは
NEWSポストセブン
日本体育大学は2026年正月2日・3日に78年連続78回目の箱根駅伝を走る(写真は2025年正月の復路ゴール。撮影/黒石あみ<小学館>)
箱根駅伝「78年連続」本戦出場を決めた日体大の“黄金期”を支えた名ランナー「大塚正美伝説」〈1〉「ちくしょう」と思った8区の区間記録は15年間破られなかった
週刊ポスト
「高市答弁」に関する大新聞の報じ方に疑問の声が噴出(時事通信フォト)
《消された「認定なら武力行使も」の文字》朝日新聞が高市首相答弁報道を“しれっと修正”疑惑 日中問題の火種になっても訂正記事を出さない姿勢に疑問噴出
週刊ポスト
地元コーヒーイベントで伊東市前市長・田久保真紀氏は何をしていたのか(時事通信フォト)
《シークレットゲストとして登場》伊東市前市長・田久保真紀氏、市長選出馬表明直後に地元コーヒーイベントで「田久保まきオリジナルブレンド」を“手売り”の思惑
週刊ポスト
ラオスへの公式訪問を終えた愛子さま(2025年11月、ラオス。撮影/横田紋子)
《愛子さまがラオスを訪問》熱心なご準備の成果が発揮された、国家主席への“とっさの回答” 自然体で飾らぬ姿は現地の人々の感動を呼んだ 
女性セブン
26日午後、香港の高層集合住宅で火災が発生した(時事通信フォト)
《日本のタワマンは大丈夫か?》香港・高層マンション大規模火災で80人超が死亡、住民からあがっていた「タバコの不始末」懸念する声【日本での発生リスクを専門家が解説】
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「金の無心をする時にのみ連絡」「断ると腕にしがみついて…」山上徹也被告の妹が証言した“母へのリアルな感情”と“家庭への絶望”【安倍元首相銃撃事件・公判】
NEWSポストセブン
被害者の女性と”関係のもつれ”があったのか...
《赤坂ライブハウス殺人未遂》「長男としてのプレッシャーもあったのかも」陸上自衛官・大津陽一郎容疑者の “恵まれた生育環境”、不倫が信じられない「家族仲のよさ」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
NEWSポストセブン