国際情報

敗戦国日本とドイツ 中央集権と地方分権に分かれたのはなぜ

 第二次世界大戦の敗戦と、その後の復興の目覚ましさという共通点から日本とドイツはよく比較される。そして、その違いもよく引き合いに出される。なぜ日本とドイツは中央集権と地方分権という異なる統治機構ができたのかについて、大前研一氏が解説する。

 * * *
 なぜ同じ第二次大戦の敗戦国でありながら、中央集権の日本とは180度異なる地方分権の統治機構がドイツにできたのか?

 シンクタンクでマーストリヒト条約の制定などに携わったヴェルナー・ヴァイデンヴェルト教授の話によると、敗戦後の占領軍(進駐軍)の統治政策の違いが挙げられる。

 つまり、ドイツでは占領軍がナチスを再興させないために中央集権を徹底的に忌避し、州が強い力を持つ地方分権の憲法を作ったのである。その後58回、時代の変化に合わせて憲法を改正しているが、地方分権の根幹は全く変えていない。

 一方、日本の場合はGHQ(連合国軍最高司令官総司令部)がお粗末だったため、何が日本の本質的な問題点だったのかということについての洞察が全くなかった。だから、二度と武力を紛争解決の手段として使いません、といった表面的な表現しかないし、統治機構に関しては「地方政府」という概念は不在である。

 しかも、ドイツの占領軍にはアメリカに亡命したユダヤ系ドイツ人が多く、憲法をドイツ語ですんなり起草できたが、日本の占領軍は日本人通訳を介して起草し、その通訳がかなり勝手な推測(たとえば天皇制を廃止すると統治不能になる、など)で解説したと思われる。

 このため、最初はGHQは天皇の戦争責任を断罪しようとしていたのに、結局、現行の昭和憲法(日本国憲法)も天皇が統治権を総攬する絶対君主制を規定した明治憲法(大日本帝国憲法)を踏襲し、第1章に「天皇」を持ってきてしまった。しかも、第8章の「地方自治」では「地方公共団体」などという地方自治・地方政府とは程遠い概念の言葉まで出てくる。

 つまり、江戸時代から続いている悪しき中央集権が全体主義に至ったという洞察のないまま、文章に何となくアメリカ的な民主主義の匂いをちりばめて中央集権システムを維持したのが昭和憲法なのである。

関連キーワード

関連記事

トピックス

ネックレスを着けた大谷がハワイの不動産関係者の投稿に(共同通信)
《ハワイでネックレスを合わせて》大谷翔平の“垢抜け”は「真美子さんとの出会い」以降に…オフシーズンに目撃された「さりげないオシャレ」
NEWSポストセブン
今の巨人に必要なのは?(阿部慎之助・監督)
巨人・阿部慎之助監督「契約最終年」の険しい道 坂本や丸の復活よりも「脅かす若手の覚醒がないとAクラスの上位争いは厳しい」とOBが指摘
週刊ポスト
大谷翔平(写真/アフロ)
大谷翔平、不動産業者のSNSに短パン&サンダル姿で登場、ハワイの高級リゾードをめぐる訴訟は泥沼化でも余裕の笑み「それでもハワイがいい」 
女性セブン
中居正広氏の近況は(時事通信フォト)
《再スタート準備》中居正広氏が進める「違約金返済」、今も売却せず所有し続ける「亡き父にプレゼントしたマンション」…長兄は直撃に言葉少な
NEWSポストセブン
不倫報道の渦中にいる永野芽郁
《ベリーショートのフェミニスト役で復活》永野芽郁が演じる「性に開放的な女性ヒロイン役」で清純派脱却か…本人がこだわった“女優としての復帰”と“ケジメ”
NEWSポストセブン
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
《六代目山口組の一足早い「お正月」》司組長が盃を飲み干した「組長8人との盃儀式」の全貌 50名以上の警察が日の出前から熱視線
NEWSポストセブン
垂秀夫・前駐中国大使へ「中国の盗聴工作」が発覚(時事通信フォト)
《スクープ》前駐中国大使に仕掛けた中国の盗聴工作 舞台となった北京の日本料理店経営者が証言 機密指定の情報のはずが当の大使が暴露、大騒動の一部始終
週刊ポスト
タレントとして、さまざまなジャンルで活躍をするギャル曽根
芸人もアイドルも“食う”ギャル曽根の凄み なぜ大食い女王から「最強の女性タレント」に進化できたのか
NEWSポストセブン
新恋人A氏と交際していることがわかった安達祐実
安達祐実、NHK敏腕プロデューサーと「ファミリー向けマンション」半同棲で描く“将来設計” 局内で広がりつつある新恋人の「呼び名」
NEWSポストセブン
還暦を迎えられた秋篠宮さま(時事通信フォト)
《車の中でモクモクと…》秋篠宮さまの“ルール違反”疑う声に宮内庁が回答 紀子さまが心配した「夫のタバコ事情」
NEWSポストセブン
熱愛が報じられた長谷川京子
《磨きがかかる胸元》長谷川京子(47)、熱愛報道の“イケメン紳士”は「7歳下の慶應ボーイ」でアパレル会社を経営 タクシー内キスのカレとは破局か
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」新年特大号発売! 紅白激震!未成年アイドルの深夜密会ほか
「週刊ポスト」新年特大号発売! 紅白激震!未成年アイドルの深夜密会ほか
NEWSポストセブン