芸能

淡路恵子「家庭の仕事がこなせる主婦はどこに行っても大丈夫」

 大女優でありながら、夫・萬屋錦之介の借金などもあり、お金に苦労した淡路恵子さん(80才)。そんな淡路さんが「これから働こう」と考えたり、ある程度の仕事のブランクのある専業主婦に送る、励ましのメッセージとは。

 * * *
“ずっと家庭にいたから、外に出て仕事なんてできない”って思い込んでる女性。反対に“専業主婦に仕事なんかできない”って思い込んでる男性。どちらも間違いね。主婦の仕事ってホント、大変だもの。あれを「仕事じゃない、義務だ」なんてよく言えるよね。

 ちなみに、私の母は昭和初期にしては珍しい職業婦人でした。仕事は助産師。だから戦争中なんか大変だったわよ。東京が空襲されるから、私たちは島根の親戚を頼って疎開してたんだけど、母だけは東京に残ったの。

 なぜって、疎開先に妊婦さんを連れて行くわけにはいかないじゃない。赤ちゃんは生まれるのを待ってくれないよね。そういう事情を無視して助産師が疎開するわけにはいかないの。

 母は空襲のさなかにだって、たくさんの命を取り上げたわ。すごい職業意識よね。そこには“女”として“母”として、そして“主婦”としての責任感があったのだと思います。

 私には2人の兄がいるんだけど、長男は本当の兄じゃないの。ある日、父が生まれたばかりの赤ちゃんを連れて帰ってきたの、そして「この子をうちの息子として育てろ」って。いきなりな話よね。でも母も気丈な人だから、「あいよ」ってなもんよ。その瞬間から母は母になったわけ。

 父が外の女に産ませた子ってわけじゃないのよ(笑い)。

 父は茨城県の久慈浜で漁師の網元をやってたの。家には漁師の若い衆がたくさん出入りしてたんだって。昔の海の仕事は今よりもずっと危険だったからね。漁に出たまま遭難しちゃう場合もあったわけ。すると親のない子ができちゃうでしょ。母はそういう子を自分の子と分け隔てなく育てたってこと。

 生みの親は違っても命に違いはないって考え方ね。そういう人だから、東京に出てから助産師をするようになっても優秀なのよ。

 今でも忘れられないのは、私が最初の出産をしたときのこと。初めてのことだから、何がなんだかわからないうちに終わって、さぁ産湯を使うって段になって、看護師さんが来てくれたわけ。

 でもうちの子は元気がいいのか、もうワーワー泣くの。で、これはだめだってことで、 2人目の看護師さんが来てくれた。でも泣きやまない。ちょうどそこに母が来て、「お湯に入れて泣かしっぱなしにしてると、お風呂嫌いになるからだめよ」って一言。

 ひざにタオルをサッと広げて、生まれたばかりの息子をスッと抱き上げて、ガーゼでくるくるって包むの。するとすっぽり覆われたおかげで赤ちゃんは安心するのね。すぐに泣きやんで大人しくなったの。

 そうなればこっちのもの、サササッと洗って、適温のお湯に入れてあげたら気持ちよくなったみたいで、おしっこをジョ~ってしてねぇ(笑い)。

 これがプロの主婦であり、プロの助産師なんだって思い知らされました。仕事は生活の一部です。全てがつながっていると思うの。

 特に家庭の仕事がこなせてる人はどこに行ったって大丈夫。なんだってできるわよ。そりゃ宇宙飛行士になれっていったって難しいかもしれないけどね(笑い)。女優くらいになら、なれるかも…。

※女性セブン2014年1月9・16日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

日米通算200勝を達成したダルビッシュ有(時事通信フォト)
《ダルビッシュ日米通算200勝》日本ハム元監督・梨田昌孝氏が語る「唐揚げの衣を食べない」「左投げで130キロ」秘話、元コーチ・佐藤義則氏は「熱心な野球談義」を証言
NEWSポストセブン
ギャンブル好きだったことでも有名
【徳光和夫が明かす『妻の認知症』】「買い物に行ってくる」と出かけたまま戻らない失踪トラブル…助け合いながら向き合う「日々の困難」
女性セブン
破局報道が出た2人(SNSより)
《井上咲楽“破局スピード報告”の意外な理由》事務所の大先輩二人に「隠し通せなかった嘘」オズワルド畠中との交際2年半でピリオド
NEWSポストセブン
河村勇輝(共同通信)と中森美琴(自身のInstagram)
《フリフリピンクコーデで観戦》バスケ・河村勇輝の「アイドル彼女」に迫る“海外生活”Xデー
NEWSポストセブン
《私の最初の晩餐》中村雅俊、慶応大学に合格した日に母が作った「人生でいちばん豪勢な“くずかけ”」
《私の最初の晩餐》中村雅俊、慶応大学に合格した日に母が作った「人生でいちばん豪勢な“くずかけ”」
女性セブン
『君の名は。』のプロデューサーだった伊藤耕一郎被告(SNSより)
《20人以上の少女が被害》不同意性交容疑の『君の名は。』プロデューサーが繰り返した買春の卑劣手口 「タワマン&スポーツカー」のド派手ライフ
NEWSポストセブン
ポジティブキャラだが涙もろい一面も
【独立から4年】手越祐也が語る涙の理由「一度離れた人も絶対にわかってくれる」「芸能界を変えていくことはずっと抱いてきた目標です」
女性セブン
生島ヒロシの次男・翔(写真左)が高橋一生にそっくりと話題に
《生島ヒロシは「“二生”だね」》次男・生島翔が高橋一生にそっくりと話題に 相撲観戦で間違われたことも、本人は直撃に「御結婚おめでとうございます!」 
NEWSポストセブン
木本慎之介
【全文公開】西城秀樹さんの長男・木本慎之介、歌手デビューへの決意 サッカー選手の夢を諦めて音楽の道へ「パパの歌い方をめちゃくちゃ研究しています」
女性セブン
大谷のサプライズに驚く少年(ドジャース公式Xより)
《元同僚の賭博疑惑も影響なし?》大谷翔平、真美子夫人との“始球式秘話”で好感度爆上がり “夫婦共演”待望論高まる
NEWSポストセブン
中村佳敬容疑者が寵愛していた元社員の秋元宙美(左)、佐武敬子(中央)。同じく社員の鍵井チエ(右)
100億円集金の裏で超エリート保険マンを「神」と崇めた女性幹部2人は「タワマンあてがわれた愛人」警視庁が無登録営業で逮捕 有名企業会長も落ちた「胸を露出し体をすり寄せ……」“夜の営業”手法
NEWSポストセブン
男装の女性、山田よねを演じる女優・土居志央梨(本人のインスタグラムより)
朝ドラ『虎に翼』で“男装のよね”を演じる土居志央梨 恩師・高橋伴明監督が語る、いい作品にするための「潔い覚悟」
週刊ポスト