ライフ

私立中高一貫校生徒の中退率「平均で1割前後」の専門家推計

 いよいよ中学受験のシーズン到来。中高年にとっては、子どもや孫が受験本番なのはもちろん、受験に備えた学習塾への入塾時期でもある。だが、中学受験さえ合格すれば“楽園”という、学習塾と私立中高一貫校が築き上げてきたイメージは、いまや崩壊しつつある。実子の受験勉強体験から取材を始め、『中学受験』(岩波新書)を上梓したジャーナリスト・横田増生氏が、中学受験ビジネスの実態に迫る。(文中敬称略)

 * * *
 リーマン・ショック以降、“中学受験熱”は一段落したといわれている。現在、ピーク時には首都圏に5万人いた私立中高一貫校の受験者が、4万人台にまで減少。しかし、それでも依然として5人に1人が受験する計算になる。私立中高一貫校に合格した親子が手に入れることができるのは、“夢の楽園”のような学校生活だといわれてきた。その“夢”を構成する大きな要素は二つある。

 一つは、6年間の教育内容を5年間で終わらせる“先取り授業”のため、最後の一年を受験勉強に充てることができるので、塾や予備校に行かなくても名の通った大学に合格できるというもの。もう一つは、公立学校のように、いじめなどの問題に悩まされることなく安心してすごせる、というものだ。

 しかし、こうしたイメージの発信源をさかのぼっていくと、塾や私学関係者といった“楽園”というイメージを広めることで利益を得る立場の人たちであることが少なくない。中学受験の大きな特徴は、小学校による受験指導がないため、その受け皿となる塾が受験や志望校に関する情報を独占的、かつ恣意的にコントロールできるという点にある。

 なかでも情報発信源として中心的な役割を果たしてきたのが日能研だ。日能研発行の『進学レーダー』の編集長・井上修は、日能研の経営理念の中核には“私学教”ともいうべき私立中高一貫校を礼賛する気持ちがあり、「これまで私立中学の受験をもり立ててきたし、われわれは私立中学受験という市場を作りながら、その市場を導いてきた」と自画自賛する。

 日能研がその“私学教”ぶりを遺憾なく発揮したのは、2002年に実施される“ゆとり教育”の内容が発表された直後の1999年のことだった。首都圏の鉄道などの交通機関に、新学習指導要領から円周率の「3.14」が消え「3」となるとして、「ウッソー!? 円の面積を求める公式 半径×半径×3!?」――などのネガティブ・キャンペーンを張り、その後の“中学受験ブーム”を牽引してきた。

 当時の文部省幹部が、「(世論の)風向きが変わった一つの要因」として、この広告を挙げるほどの破壊力があった。こうした巧みな情報操作の結果、「私立中高一貫校=夢の楽園」という図式ができあがっていった。

関連キーワード

関連記事

トピックス

(写真/共同通信)
《神戸マンション刺殺》逮捕の“金髪メッシュ男”の危なすぎる正体、大手損害保険会社員・片山恵さん(24)の親族は「見当がまったくつかない」
NEWSポストセブン
アメリカの女子プロテニス、サーシャ・ヴィッカリー選手(時事通信フォト)
《大坂なおみとも対戦》米・現役女子プロテニス選手、成人向けSNSで過激コンテンツを販売して海外メディアが騒然…「今まで稼いだ中で一番楽に稼げるお金」
NEWSポストセブン
ジャスティン・ビーバーの“なりすまし”が高級クラブでジャックし出禁となった(X/Instagramより)
《あまりのそっくりぶりに永久出禁》ジャスティン・ビーバー(31)の“なりすまし”が高級クラブを4分27秒ジャックの顛末
NEWSポストセブン
愛用するサメリュック
《『ドッキリGP』で7か国語を披露》“ピュアすぎる”と話題の元フィギュア日本代表・高橋成美の過酷すぎる育成時代「ハードな筋トレで身長は低いまま、生理も26歳までこず」
NEWSポストセブン
「舌出し失神KO勝ち」から42年後の真実(撮影=木村盛綱/AFLO)
【追悼ハルク・ホーガン】無名のミュージシャンが「プロレスラーになりたい」と長州力を訪問 最大の転機となったアントニオ猪木との出会い
週刊ポスト
野生のヒグマの恐怖を対峙したハンターが語った(左の写真はサンプルです)
「奴らは6発撃っても死なない」「猟犬もビクビクと震え上がった」クレームを入れる人が知らない“北海道のヒグマの恐ろしさ”《対峙したハンターが語る熊恐怖体験》
NEWSポストセブン
大谷が購入したハワイの別荘に関する訴訟があった(共同通信)
「オオタニは代理人を盾に…」黒塗りの訴状に記された“大谷翔平ビジネスのリアル”…ハワイ25億円別荘の訴訟騒動、前々からあった“不吉な予兆”
NEWSポストセブン
話題を集めた佳子さま着用の水玉ワンピース(写真/共同通信社)
《夏らしくてとても爽やかとSNSで絶賛》佳子さま“何年も同じ水玉ワンピースを着回し”で体現する「皇室の伝統的な精神」
週刊ポスト
ヒグマの親子のイメージ(時事通信)
《駆除個体は名物熊“岩尾別の母さん”》地元で評判の「大人しいクマ」が人を襲ったワケ「現場は“アリの巣が沢山出来る”ヒヤリハット地点だった」【羅臼岳ヒグマ死亡事故】
NEWSポストセブン
真美子さんが信頼を寄せる大谷翔平の代理人・ネズ・バレロ氏(時事通信)
《“訴訟でモヤモヤ”の真美子さん》スゴ腕代理人・バレロ氏に寄せる“全幅の信頼”「スイートルームにも家族で同伴」【大谷翔平のハワイ別荘訴訟騒動】
NEWSポストセブン
中居正広氏の騒動はどこに帰着するのか
《中居正広氏のトラブル事案はなぜ刑事事件にならないのか》示談内容に「刑事告訴しない」条項が盛り込まれている可能性も 示談破棄なら状況変化も
週刊ポスト
離婚を発表した加藤ローサと松井大輔(右/Instagramより)
「ママがやってよ」が嫌いな言葉…加藤ローサ(40)、夫・松井大輔氏(44)に尽くし続けた背景に母が伝えていた“人生失敗の3大要素”
NEWSポストセブン