女優・原田知世。華やかなトップアイドル時代を経て、露出は減っていき、いよいよ40を過ぎて離婚も経験して、ドラマの主役に戻ってきた。彼女の物静かな横顔に、人が年を重ねることの複雑さと奥深さが潜んでいる。それがいい味わいになっています。
内省的でうつむき加減の彼女の視線にふと、人生について考えさせられてしまう女性視聴者は多いのかもしれません。
このドラマのファンを自認する60代の女性は言います。
「私のように、一人でテレビを見るような単身世帯は多いはず。お笑い番組やコメディドラマは、一緒に楽しむ人がいないと空しい時を過ごすばかり。派手なアクションものにはついていけない。それよりドラマを見ながら、もし自分だったらどうするだろう、どうなるだろうとか、自分の人生っていったい何だったんだろう、女の生き方はどんな風に変わるのかと、共感し考えることで癒されるんです。『紙の月』はそんなドラマだから、見終わった後も余韻が続くのです」
この女性の指摘にハっとしました。
お笑い番組やコメディタッチのドラマは、もしかしたら、誰かと一緒に笑いを「シェアする」ことに意味があるのかも。「ねえ見た?」と、若い人同士がお笑い番組を「話の接ぎ穂」に使ったり、人間関係の潤滑油として使うのはよく理解できる。
けれども、人生経験を重ねてきた大人世代シニア世代が、つれあいに先立たれたりして一人暮らしになり画面を見つめている時、テレビに求めているものはもっと別にあるのでは。
派手なアクションや刺激的な「刑事もの」「医療もの」も娯楽としてあっていい。けれど、その枠組みに依存して、似たようなドラマを連発しているだけでは、テレビに「別の何か」を求めて向き合っている人たちのニーズをとり逃してしまわないでしょうか?
なぜなら、シニアの単身世帯は、まさしく「テレビが友達」なのですから。