「ここのファンは、狭いとか混んでいるからいやだとか、だれも思ってませんね。逆にそのことがここに来る理由なんです。ここで飲めばその心地よさがよくわかりますよ」
そんな先輩に連れてこられてここのファンになったという40代氏は、まだまだ飲むぞの風情を見せて、話をリレーする。
「ここって、たばこ屋だとずっと思ってたんです。たばこの自販機が目立つし、店の中はたばこの品揃えがすごいじゃないですか。2年前に誘われたとき、ええーっ、ここで飲めるんだって、驚きました。楽しい人と知り合えたし、日本酒をワイングラスで飲ませてくれたりする前田さんがアイディアマンで明るいし」
先ほどのイラストは、前田さんの作品。そればかりか朱色が目に鮮やかな、彼が締めている前掛けや入口に揺れる暖簾も彼がデザインしたもの。
「5代目を次ぐ前は勤め人で、デザイン部にいたんです。お客さんとのやりとりも楽しいですけど、こういうことも大好きですね」
その朱色の暖簾が見つめる外側は、東西に走る広瀬通りと、南北に走る東一番丁が交差していて、仙台のハチ公前広場と言われるほど賑やかな待ち合わせスポットになっている。
「以前は、不気味で入りづらいとか言う人もいましたね。彼のように、ここが飲める場所だってことを知らない人も多かったですから。でも、渋谷系ファッションや音楽の東北の発信地という雰囲気に合わせて、3年前の12月に大改装しました」