そして美幸の復讐はある衝撃の事件へと発展するのだが、かつて苛められたはずの彼女を駆り立てるのも村上や和希同様の快感であり〈罪悪感〉だった。鈴木氏はその衝動を性的に幼い中学生の尿意に象徴させ、良くも悪くも人間を捕えて放さないものとして描く。

「僕は最近オシッコのことを小さな射精と呼んでいて、何しろ男は出る穴が一緒。まだ仕分けが不完全な小中学生が興奮してチビっちゃうのも当然で、特にエロ本とか万引きとか、悪いことをするとそうなるメカニズムに興味があるんですね。

 愛というのも相当厄介で、憎しみや暴力と薄皮一枚で隣接する危うさが愛自体をピュアたらしめている気もする。その中で美幸の愛だけを美化するつもりはないけど、アドレナリンは出ちゃうんです、残念ながら! ただその復讐心や罪悪感が生きる力になることだってあるし、期待なんてしないと言いつつ期待してしまうところが、僕が彼女の一番好きなところなんです」

〈人間は求めてしまう生き物です〉〈やめておけばいいのに、やめられない〉〈脳の馬鹿野郎です〉と振り返る彼女の半生を断罪できるのは法くらい。なるほど人は愛しいくらい大馬鹿野郎である。

【著者プロフィール】
 鈴木おさむ(すずき・おさむ):1972年千葉県生まれ。高校時代に放送作家を志し、19歳でデビュー。『SMAP×SMAP』『お試しかっ!』等、数々の人気バラエティ番組の構成を手がけ、舞台の作・演出、映画の脚本や小説、エッセイも執筆。主な著書に2002年に〈交際0日〉で結婚した森三中・大島美幸さんとの生活を綴った『ブスの瞳に恋してる』シリーズや『ハンサム★スーツ』『テレビのなみだ』『芸人交換日記~イエローハーツの物語~』等。180cm、87kg、O型。

(構成/橋本紀子)

※週刊ポスト2014年2月21日号

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