ライフ

【著者に訊け】鈴木おさむ著『美幸』 妻の虐め体験から着想

【著者に訊け】鈴木おさむ氏/『美幸』/角川書店/1365円

 例えばメールやLINEにはない、肉筆だけが宿す臨場感や痛みのようなもの。それをあえて小さな小屋で直に届けたくて、2012年秋、放送作家・鈴木おさむ氏は『鈴木おさむ劇場』を立ち上げた。その第1弾が山崎樹範・鳥居みゆき共演による2人芝居『美幸』だった。

 主人公の名は2002年に結婚した妻、森三中の大島美幸さんに由来。彼女がかつて受けたイジメに着想を得た物語を「同じ名前の人がどう受け止めるかにはいつも気を遣う」と鈴木氏は言う。

 このほど上梓された小説『美幸』でも話者は計3人。現在服役中の美幸が綴る手紙と、“被害者”として聴取を受ける元俳優〈雄星〉の供述、そして美幸の弁護にあたる〈矢島〉の弁論によって、事件の詳細が徐々に明らかになっていく。

 それは美幸が雄星のためを思って実行した〈復讐〉だった。それでいて見返りを求めない彼女の〈無償の愛〉が醸成された背景には、中学時代のイジメや16歳の時の過酷すぎる失恋があり、愛ゆえに復讐の鬼と化した美幸は果たして不幸なのか、それとも幸せなのか? 鈴木はこう語る。

「元々これは小説のつもりで書き始めたんですけど、一度舞台にした方が物語が強靭になる予感がしたんですね。僕は小説にもいろんな書き方があっていいと思うし、『これは私の物語だ』と言ってくれた鳥居みゆきを始め、演者や観客の命を吹き込まれた物語が単なるお話を超えたパワーを持ってくれるんじゃないかと。

 当時のことをネタにすることもあるうちの奥さんですが、僕がふざけて彼女を無視したら驚くくらい泣いたことがあるんです、『無視だけは絶対しないで下さい』って。苛められた人には一生消えない傷が刻まれるんだって僕自身反省したし、彼女にとってのお笑いに似たモチベーションをこの美幸にも見つけてほしかった」

関連記事

トピックス

マムカ司令官
【ウクライナの戦場取材でYOASOBI】報道カメラマンがウクライナで戦うジョージア部隊「世界初の最前線取材」の許可を得るまで ドーベルマンとフィアット500に乗り、車内で『夜に駆ける』
NEWSポストセブン
1990年代、多くの人気バラエティ番組で活躍していたタレント・大東めぐみさん
《交通事故で骨折と顔の左側の歯が挫滅》重傷負ったタレントの大東めぐみ「レギュラーやCM失い仕事ほぼゼロに」後遺症で15年間運転できず
NEWSポストセブン
ポータブルトイレの大切さを発信するYoutuber・わさびちゃん
「そもそもトイレの話がタブー過ぎる」Youtuberわさびちゃんが「トイレ動画」を公開しまくるようになったきっかけ「芸人で恥ずかしいこともないし、夫に提案」
NEWSポストセブン
1990年代、多くの人気バラエティ番組で活躍していたタレント・大東めぐみさん
《事務所が猛反対もプロ野球選手と電撃結婚》元バラドルの大東めぐみ、人気絶頂で東京から大阪へ移住した理由「『最近はテレビに出ないね』とよく言われるのですが…全然平気」
NEWSポストセブン
全国で車中泊をしているわさびちゃん夫婦。夫は元お笑い芸人のピーチキス・けん。
YouTuber・わさびちゃんが「トイレ動画」でバズるまでの紆余曲折「芸人時代に“女”を求められたり、男性芸人から嫉妬されたり…」
NEWSポストセブン
悠仁さまに関心を寄せるのは日本人だけではない(時事通信フォト)
〈悠仁親王の直接の先輩が質問に何でも答えます!〉中国SNSに現れた“筑波大の先輩”名乗る中国人留学生が「投稿全削除」のワケ《中国で炎上》
週刊ポスト
「ビッグダディ」こと林下清志さん(60)
《借金で10年間消息不明の息子も》ビッグダディが明かす“4男5女と三つ子”の子供たちの現在「メイドカフェ店員」「コンビニ店長」「3児の母」番組終了から12年
NEWSポストセブン
リシェット
戦場取材に欠かせない「フィクサー」とは? ウクライナ入りした報道カメラマンが紹介された“取材に愛犬を連れて来る男” ギャラは「1日1500ドル」と法外な金額に
NEWSポストセブン
女児盗撮の疑いで逮捕の小瀬村史也容疑者(37)。新たに”わいせつ行為”の余罪が明らかになった
「よくタブレットで子どもを撮っていた」不同意わいせつ行為で再逮捕の小瀬村史也容疑者が“盗撮し放題だったワケ” 保護者は「『(被害者は)わからない』の一点張りで…」
NEWSポストセブン
成年式を控える悠仁さまと第1子を出産したばかりの眞子さん(写真・右/JMPA)
眞子さん、悠仁さまの成年式を欠席か いまなお秋篠宮家との断絶は根深く、連絡を取るのは佳子さまのみ “晴れの日に水を差す事態”への懸念も
女性セブン
「ビッグダディ」こと林下清志さん(60)
《多産DVを語ったビッグダディ》「子どもができたら勝手に堕ろすんじゃないぞ」4男6女の父として子供たちに厳しく言い聞かせた理由
NEWSポストセブン
ボニー・ブルーとの2ショット(インスタグラムより)
《タダで行為できます》金髪インフルエンサー(26)と関係を持った18歳青年「僕は楽しんだから、被害者になったわけじゃない」 “捕食者”との批判殺到に反論
NEWSポストセブン