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増加する相続トラブル 約32%が遺産1000万円以下の調停

 そうした状況に詳しい、NPO法人遺言・相続リーガルネットワークの長家広明弁護士はこう語る。
「相続に対する関心は世の中で大変高く、相続セミナーを行なえば毎回好評。しかし、具体的に遺言を書くとなると、ハードルを感じている人が多いです。

 まず、相続手続きが終わるまで、故人の銀行口座から現金をおろせなくなることを知っている人はほとんどいません。そのせいで葬儀費用などに困ったりするケース。また相続紛争の平均係争月数は16.3か月に上る一方で、原則として相続税は10ヶ月以内に現金納付しなければならない。相続争いの最中にも関わらず、相続税の支払いが求められれば、誰が支払うのかというのは大きな問題になります」

 こうした心配はあるものの、“ひとまず老後の生活設計や目先の状況を整理しておきたい。遺言書など、公的な手続きは面倒だし、もう少し先でいいかな”という人には、老後の生活資金やもしもの場合に備えた“プレ相続”とも呼べる使い方が可能なサービスを検討するのも良いかもしれない。

 例えば「収益分配方式」の金銭信託には、そうしたケースを意識した商品もあり、代表例としては三菱UFJ信託銀行が2012年3月に販売を開始した『ずっと安心信託』が挙げられる。この商品は、老後の生活資金として毎月一定額を受け取れるようにする「資産管理」としての使い方がひとつ。「第2受益者」の設定が可能で、葬儀費用・相続税用途といった一時金の受取りや、遺される家族の生活資金として分配対象者を指定する「遺言代用信託」としても活用できる。

 前出「相続に関するアンケート調査」では、こうした“プレ相続”的な「簡易な相続サービスを利用したい」と答えた人は62.1%。長家弁護士も「遺言だけで完璧な相続が行なえるわけではない。生命保険や信託など様々な商品を組み合わせることで、トラブル発生率が0に近づいていく――と考えられます」と話す。

 こうした“プレ相続”に活用できる商品を扱う窓口では、資産管理と同様に、相続に関する相談が無料でできるサービスを提供しているケースもある。煩雑な手続きやトラブルの可能性を避けつつ、新たな選択肢を求める人は多い。こうした商品やサービスの選択肢が増えることによって、“終活”の形が、より前向きなものへと繋がる可能性に期待したい。

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