国内

「今度会おう」「企画出します」で何もせぬ「やるやる詐欺」

豆柴センパイ、捨て猫だったコウハイと。

「間違いを犯したことのない人というのは、何も新しいことをしていない人のことだ」と語ったのはアルベルト・アインシュタインです。古今東西の賢人による名言やことわざなどから良好な人間関係を作るためのヒントを解説した書『あいつの気持ちがわかるまで』(宝島社)を上梓した著述家の石黒謙吾さんが、この言葉の真意を解説します。

 * * *
身の周りにいませんか? いつまで経っても具体的に動かない人が。「今度会おう会おう!」と言いながら日にちの約束をしてこないとか。僕はこれを「やるやる詐欺」と呼んでいます。こういった人々はいつも「やりましょうよ、やりましょうよ!」とその時だけは威勢が良い。いや、別に「やっぱダメでした! 会えません!」だったら構わない。それを言ってくださいよ! 具体的に動かないと絶対進まないのに、動いてくれない人が多過ぎる。

一番カッコ悪いのはもっと大きいやつですね。「やっぱ、情報化時代はこういう新しい動きをしないといけない!」みたいに、あまりにもスケールがデカ過ぎることを言う。各論では何ですか? 一歩動き出すために何をやるのですか? と尋ねて答えられないと、「お前は評論家か!」と思います。「批評」という行為や、「自分はこれから大きいことをやりたい」という状況にある時は、そのことは言わない方がいいのではないでしょうか? 大きい話はなかなか達成できることではないので、「やるやる詐欺」扱いされてしまうからです。

でも、小さい話は言えばいい。話すことによって結果に繋がるかもしれないですからね。僕は今年53歳ですが、小さい話を言えるようになったのはこの2~3年のことです。若い頃に言ったら、「夢見がちなヤツめ」と思われると思っていたので、それはカッコ悪いな……、と。

でも、53ってオッサンですから、体力も減っているし徹夜もできないので、何かを実現するにも若者に敵わないところがあります。でも、「これを実現するのは夢じゃないか……」と思うことはあるものの、普段から常に半分くらい、イメージしていることは実現できているわけです。年を取って経験も増え、少しは足場が固まっているので、できるようになったのかもしれません。そういった意味では、オッサンは小さな話は言ってしまっても構わないでしょう。

20代の人は自分の現在の器といいますか、能力とはかけ離れたことを言いがちです。夢は大きい方がいいですが、あまり言わない方がいいです。夢は言っていた方が実現する――こういう意識も分かります。でも、人がどう思うかを考えた方がいいです。目先のこと、たとえば来週できそうなことや、1年くらいでできることがあるのであれば、いいです。会社を作り、1年間で3倍の売り上げにする、とかだったらいい。しかし、「世の中を動かす」みたいな具体性ないものはダメなんです。抽象論になってしまうのですね。

「やるやる詐欺」に戻りますが、一番の身近な例はメールをくれない人。「企画書出します」といって、出さない人。むちゃくちゃ忙しい人だと分かっていて、「こりゃ、進められないんだな……」ということが分かる人のことは、理解できるんです。進まないのは、よっぽど忙しいんだろう、と僕だって思います。

明らかにそんなに仕事していないだろうという人がメールしてこなかったら、「あらららら……」と思います。仕事するんだったら、ちゃんと動かないといけないんですよ。そうしないと失敗さえできません。失敗しないと学べません。僕は野球をやっていますから、自分が投げているボールを見て「あぁ、ヒジが下がっているな。コントロールがヒドいのはこれが理由か」ということが分かります。理由が分かれば、具体的対策に繋げられるのです。メールさえ送らないのであれば、失敗の理由は分かりません。

ここ3~4年で思っているのが、カルチャーに対して造詣が深くて、インプットがすごい出版関係の人って、アウトプット量が少な過ぎるということです。ものすごい知識がありますけど、インプット量が多過ぎて飽和して、形が作れないか下手、或いは動けない状態になっています。あれが好き、これが好き、とインプットしているものの、何かアウトプットとか企画を出して下さい、と言うと何も出てこないんですよね。

「インプット病」とでも言えましょうか。本を読んだり映画を観たりすることに快感はありますが、インプットばかりして、アウトプットをしないとブヨブヨしちゃうじゃないですか。

口だけで、何も残せない出し方を知らないのかもしれませんね。仕事によって色々状況は違うとは思いますが、出す術を知らない人もいます。それをどうやってフィルターに通していくか、の工程を知らないから、話をしていても、右から左へ流すだけです。いわば、材料があるのに料理をしてくれないという状態なんです。料理しなくては面白くないでしょ? 魚を釣って持ち帰ってきただけでは面白くないでしょう。魚がそこにあることは一応「食べる」ことへの糸口ではあるものの、そこで魚の話や、釣りの技術の話をしても、自分の得意話しかできず、料理ができないと結局何のアウトプットにもならないんですよ。

最近会った若いクリエーターで、「次は何をすればいいですか?」「締め切りはいつですか?」といった形ですぐに答えと方法を聞いてくる方がいました。こちらはそれの答えを言ってもいいのですが、この方は深く考えてなく、すぐに答えが欲しいだけなんです。だから、料理法がいつまでたっても分からないんですよね。仕事って料理だと思います。いろんな素材を選ぶ面があるワケです。

仕入れて、どう調理するかのレシピがあって、作っていくスキルが必要で、サーブするというところまで広がり、スキルが上がっていくのが仕事ってものなのですね。

【石黒謙吾(いしぐろ・けんご)】
著述家・編集者 1961年金沢市生まれ。
■映画化されたベストセラー『盲導犬クイールの一生』、さまざまな図表を駆使し森羅万象を構造オチの笑いとしてチャート化する“分類王”としての『図解でユカイ』はじめ、『2択思考』『7つの動詞で自分を動かす』『ダジャレヌーヴォー』『カジュアル心理学』『CQ判定常識力テスト』『ナベツネだもの』『ベルギービール大全』『短編集 犬がいたから』など幅広いジャンルで著書多数。
■プロデュース・編集した書籍も、ベストセラー『ジワジワ来る○○』(片岡K)、『ナガオカケンメイの考え』、『負け美女』(犬山紙子)、『飛行機の乗り方』(パラダイス山元)など200冊近く。
■草野球歴34年で年間40試合というバリバリの現役プレーヤー。高校野球とビールと犬と笑いとキャンディーズ、そして熱いモノすべてを愛する。

関連キーワード

関連記事

トピックス

大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
大ヒット中の映画『4月になれば彼女は』
『四月になれば彼女は』主演の佐藤健が見せた「座長」としての覚悟 スタッフを感動させた「極寒の海でのサプライズ」
NEWSポストセブン
国が認めた初めての“女ヤクザ”西村まこさん
犬の糞を焼きそばパンに…悪魔の子と呼ばれた少女時代 裏社会史上初の女暴力団員が350万円で売りつけた女性の末路【ヤクザ博士インタビュー】
NEWSポストセブン
華々しい復帰を飾った石原さとみ
【俳優活動再開】石原さとみ 大学生から“肌荒れした母親”まで、映画&連ドラ復帰作で見せた“激しい振り幅”
週刊ポスト
中国「抗日作品」多数出演の井上朋子さん
中国「抗日作品」多数出演の日本人女優・井上朋子さん告白 現地の芸能界は「強烈な縁故社会」女優が事務所社長に露骨な誘いも
NEWSポストセブン
死体損壊容疑で逮捕された平山容疑者(インスタグラムより)
【那須焼損2遺体】「アニキに頼まれただけ」容疑者はサッカー部キャプテンまで務めた「仲間思いで頼まれたらやる男」同級生の意外な共通認識
NEWSポストセブン
学歴詐称疑惑が再燃し、苦境に立つ小池百合子・東京都知事(写真左/時事通信フォト)
小池百合子・東京都知事、学歴詐称問題再燃も馬耳東風 国政復帰を念頭に“小池政治塾”2期生を募集し準備に余念なし
週刊ポスト
(左から)中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏による名物座談会
【江本孟紀×中畑清×達川光男 順位予想やり直し座談会】「サトテル、変わってないぞ!」「筒香は巨人に欲しかった」言いたい放題の120分
週刊ポスト
大谷翔平
大谷翔平、ハワイの25億円別荘購入に心配の声多数 “お金がらみ”で繰り返される「水原容疑者の悪しき影響」
NEWSポストセブン
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
女性セブン
ホワイトのロングドレスで初めて明治神宮を参拝された(4月、東京・渋谷区。写真/JMPA)
宮内庁インスタグラムがもたらす愛子さまと悠仁さまの“分断” 「いいね」の数が人気投票化、女性天皇を巡る議論に影響も
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン