民主党政権下の3年3か月間で9人だった死刑執行数が、自民党に政権が移ってわずか1年余で8人とペースを増している。
大阪弁護士会のプロジェクトチーム(PT)は1月末、絞首刑について問題提起するDVD『絞首刑を考える』を製作した。現在のところ、DVDは大手マスコミの司法担当記者や弁護士を対象に1度上映・公開されただけで、一般市民が自由に閲覧できる状態にはなっていない。
「市民に死刑の実態について知ってもらうために製作しました。ただし、現時点では公開方法は未決定で、公開時期も検討中です」(PT座長・金子武嗣弁護士)
映像は物議を醸しそうな印象だが、本誌はその内容を独自にキャッチした。
DVDは約25分。『刑罰の歴史と死刑』、『わが国の絞首刑の執行方法』、『死刑の合憲性について』など7章で構成されている。まずは世界史を紐解いて刑罰の歴史を紹介するところから始まり、斬首やギロチン、電気椅子など諸外国の事例を紹介していく。かつてはより苦痛を与える方向だったが歴史を重ねるのに従い、できるだけ残虐性のない方法をとるようになったことが体系的に学べるようになっている。
全編を通じ最も力を込めて解説されているのが『死に至るメカニズム』のコーナーである。現在わが国の死刑執行の方法として採用されている「絞首刑」について、その死因、つまり「執行の瞬間」に何が起こっているのかを詳細に分析しているのだ。
これまでは、絞首刑に処されると頸部が破壊され、その瞬間に意識を失うため受刑者は苦痛を感じないとされてきた。その根拠となっているのが東大法医学教室教授などを歴任した古畑種基博士が1952年に行なった鑑定である。
古畑博士は「体重が20キロ以上あれば左右の頸動脈と両椎骨(ついこつ)動脈を完全に圧塞することができ、その瞬間に人事不省に陥り全く意識を失う。縊死は最も苦痛のない安楽な死に方であることは法医学上の常識になっている」と結論づけ、それが1955年の「絞首刑は残虐な刑罰ではない」とする最高裁判決に繋がった。現在に至っても、それが判例として定説化している。
だが、このDVDでは絞首刑に関する新しい衝撃的な学説が紹介されている。オーストリア・インスブルック医科大学法医学研究所副所長でオーストリア法医学会会長のヴァルテル・ラブル博士の研究によると、実はすぐに意識が失われるのはまれで、絶命まで10数分にわたって苦しんだり、場合によっては頭部が切断されたりすることもあると指摘されているのだ。
※週刊ポスト2014年3月14日号