ビジネス

増税前の日用品買いだめ「1年分買ったら3000円の得」と識者

 17年ぶりとなる消費税増税まで、残り1か月を切った。自動車や家電など“大物”の駆け込み需要はひと段落した模様だが、3月に入って盛り上がってきたのが細々とした日用品の「まとめ買い」である。

 小売り各社では、割引やポイント還元などをつけたまとめ買いセールの客引き合戦があちこちで繰り広げられている。

 生活者の意識・実態調査を行うトレンド総研が3月4日に発表した「消費増税前の買いだめ・まとめ買い」レポートによれば、アンケートした主婦500人のじつに64%が買いだめの予定があると答えている。

 5%のうちに身の回りの品々を大量購入して少しでも増税後の生活費を浮かせたいと考えるのは、賢い主婦でなくても当然だろう。

 ちなみに、同調査では買いだめをする予定の商品も聞いており、「トイレタリー・バス用品」が65%でトップ。次いで「保存食品・冷凍食品」(57%)、「調味料」(56%)、「化粧品」(49%)、「お酒」(43%)の順となっている。

 当サイトのヒアリングでも「ビールは賞味期限もあるが、毎日晩酌することを考えると、数箱のケース買いはする予定」(50代男性)、「たばこは10カートンぐらい買いだめしてできるだけ長く持たせたい」(40代男性)、「コメやミネラルウォーター、書籍のまとめ買いを考えている」(40代女性)などの声が多く聞かれた。

 だが、「いまのところ駆け込み買いの勢いがそれほど強いとは思えない」と指摘するのは、第一生命経済研究所の主席エコノミスト、熊野英生氏である。

「消費者は意外に冷静で、3%上がって生活が苦しくなるから先にお金を使って大量買いしなきゃ、という追い込まれた心理状態にまではなっていません。生活必需品は5%の税率だろうが8%の税率だろうが買わざるを得ませんしね。日用品を前倒しで購入されるインパクトは、せいぜい1か月分くらいではないでしょうか」(熊野氏)

 熊野氏が以前に弾き出した試算では、まとめ買いされそうな日用品10品目【コメ、たばこ、ビール、発泡酒等飲料、書籍、焼酎、清酒、冷凍調理食品、化粧クリーム、石鹸】の1年分の支出額合計(1世帯あたり)は9万9000円。それらを5%時と8%時の消費税負担の差額でみると、わずか2836円という結果が出た。

 1年分の“買いだめ”で3000円もトクしないことが分かれば、なるほど1か月分の“買い置き”程度で十分と考える冷静な消費者がいてもおかしくない。

「楽観的だと言われるかもしれませんが、駆け込み需要の盛り上がりが相対的に小さければ、小売り業者が危惧している増税後の売り上げ減も小幅にとどまるのではないかと思われます。

 私の見方では、駆け込み需要の反動減は4月、5月で止まり、6月以降はリバウンド傾向が見られ、7~9月は新しい重要が生まれてくる。夏以降の需要拡大がどこまで伸びるかが日本経済の行方を占う意味において重要なポイントになるでしょう」(前出・熊野氏)

 それでも長期間の買いだめを予定している人は、一度、生活必需品のリストアップと増税による負担増がいくらになるか計算してみるといいだろう。

関連キーワード

関連記事

トピックス

若手俳優として活躍していた清水尋也(時事通信フォト)
「もしあのまま制作していたら…」俳優・清水尋也が出演していた「Honda高級車CM」が逮捕前にお蔵入り…企業が明かした“制作中止の理由”《大麻所持で執行猶予付き有罪判決》
NEWSポストセブン
「正しい保守のあり方」「政権の右傾化への憂慮」などについて語った前外相。岩屋毅氏
「高市首相は中国の誤解を解くために説明すべき」「右傾化すれば政権を問わずアラートを出す」前外相・岩屋毅氏がピシャリ《“存立危機事態”発言を中学生記者が直撃》
NEWSポストセブン
3児の母となった加藤あい(43)
3児の母となった加藤あいが語る「母親として強くなってきた」 楽観的に子育てを楽しむ姿勢と「好奇心を大切にしてほしい」の思い
NEWSポストセブン
「戦後80年 戦争と子どもたち」を鑑賞された秋篠宮ご夫妻と佳子さま、悠仁さま(2025年12月26日、時事通信フォト)
《天皇ご一家との違いも》秋篠宮ご一家のモノトーンコーデ ストライプ柄ネクタイ&シルバー系アクセ、佳子さまは黒バッグで引き締め
NEWSポストセブン
過去にも”ストーカー殺人未遂”で逮捕されていた谷本将志容疑者(35)。判決文にはその衝撃の犯行内容が記されていた(共同通信)
神戸ストーカー刺殺“金髪メッシュ男” 谷本将志被告が起訴、「娘がいない日常に慣れることはありません」被害者の両親が明かした“癒えぬ悲しみ”
NEWSポストセブン
ハリウッド進出を果たした水野美紀(時事通信フォト)
《バッキバキに仕上がった肉体》女優・水野美紀(51)が血生臭く殴り合う「母親ファイター」熱演し悲願のハリウッドデビュー、娘を同伴し現場で見せた“母の顔” 
NEWSポストセブン
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
《六代目山口組の抗争相手が沈黙を破る》神戸山口組、絆會、池田組が2026年も「強硬姿勢」 警察も警戒再強化へ
NEWSポストセブン
木瀬親方
木瀬親方が弟子の暴力問題の「2階級降格」で理事選への出馬が絶望的に 出羽海一門は候補者調整遅れていたが、元大関・栃東の玉ノ井親方が理事の有力候補に
NEWSポストセブン
和歌山県警(左、時事通信)幹部がソープランド「エンペラー」(右)を無料タカりか
《和歌山県警元幹部がソープ無料タカり》「身長155、バスト85以下の細身さんは余ってませんか?」摘発ちらつかせ執拗にLINE…摘発された経営者が怒りの告発「『いつでもあげられるからね』と脅された」
NEWSポストセブン
結婚を発表した趣里と母親の伊藤蘭
《趣里と三山凌輝の子供にも言及》「アカチャンホンポに行きました…」伊藤蘭がディナーショーで明かした母娘の現在「私たち夫婦もよりしっかり」
NEWSポストセブン
高石あかりを撮り下ろし&インタビュー
『ばけばけ』ヒロイン・高石あかり・撮り下ろし&インタビュー 「2人がどう結ばれ、『うらめしい。けど、すばらしい日々』を歩いていくのか。最後まで見守っていただけたら嬉しいです!」
週刊ポスト
2021年に裁判資料として公開されたアンドルー王子、ヴァージニア・ジュフリー氏の写真(時事通信フォト)
《恐怖のマッサージルームと隠しカメラ》10代少女らが性的虐待にあった“悪魔の館”、寝室の天井に設置されていた小さなカメラ【エプスタイン事件】
NEWSポストセブン