スポーツ

ヤクルトの伝説応援団長・岡田さん 押し付け応援嫌っていた

 1月末、日本野球機構(NPB)は、中日ドラゴンズの私設応援団連合に対し、応援許可を出さないことを決定した。鳴り物を使った応援には賛否の声もあるが、過去にはファンから大いに愛された応援団長もいた。スポーツライターの永谷脩氏が、ヤクルトの伝説の応援団長で、漫画『がんばれ!!タブチくん!!』(いしいひさいち著)にも登場した岡田正泰氏のエピソードを綴る。

 * * *
「応援団というのはよ、バカじゃできない、賢くてもできない。中途半端じゃ、尚できないってもんだぜ。出すぎてもいけねェ、出すぎなくてもダメなんだ」

 そんな信念を口癖にして、神宮球場に一大ブームを巻き起こした「伝説の応援団長」がいた。名を岡田正泰という。喜劇俳優の大村崑にも似た鼻メガネで球場に現れ、3回ぐらいになると内野席の金網に上って声を張り上げる。国鉄時代から、スワローズを熱心に応援していた。

 岡田の応援はすべて手作り。家業が看板屋だったことも幸いして、応援のプラカードを全部自分で作っていた。かつて杉並区の永福町にあった自宅兼作業場には、描きかけの仕事の看板がズラリと並ぶ中に、明日の試合に使うプラカードも何本かあった。すべて描き上げると、空が白々と明るくなっていることもザラだったという。

 ただ岡田の自慢は、「優勝を決めた翌日だって本業の看板描きは休まなかった」ことで、夫人も「本業には絶対に影響させない、というのがこの人なのよ」と認めていた。そして「私よりもヤクルトに恋をしたのだから仕方がない」と、眼を細めて見守っていたことを思い出す。

『東京音頭』に乗って、傘を振って応援する現在のスタイルも、岡田が考案したものだ。最初、『東京音頭』を演奏するトランペットの奏者は、神宮外苑で1人で練習していた大学浪人生だった。岡田が彼の音色を聞いて口説いたのだという。また傘での応援も、神宮外苑に来ていたアベックが捨てたビニール傘を見て、使えないかと考えたという話を聞いた。

 晩年、岡田に1枚の写真を見せてもらったことがある。1978年の優勝メンバーが一堂に会した記念写真の中に、ちゃっかり岡田団長も写っているのだ。

「オヤジがいたから優勝できたんだって、大杉(勝男)さんがグラウンドに入れてくれたんだ。応援団冥利に尽きるよな。出すぎちゃいけないんだけど、この時だけは許してもらった」

 そういって、照れ笑いを浮かべていた。岡田は画一的で、一方的な押しつけの応援を嫌っていた。神宮の持つアカデミックさと、インテリジェンスと、江戸っ子の粋。巨人でも日本ハムでもなく、神宮にヤクルトがいなければならない理由を、『東京音頭』で教えてくれたように思う。

※週刊ポスト2014年3月14日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

元旦に結婚を発表した長澤まさみ
《長澤まさみが過去のSNS全削除と長期休養への背景》長澤まさみ、主演映画の撮影を1年延ばして選んだ電撃婚 『SHOGUN』監督夫と“帯同同伴カナダ計画”
NEWSポストセブン
《まだみんなウイスキーのおもしろさに気付いていない》イチローズモルトの初代ブレンダーが営業マン時代に着目したこと【連載「酒と人生」】
《まだみんなウイスキーのおもしろさに気付いていない》イチローズモルトの初代ブレンダーが営業マン時代に着目したこと【連載「酒と人生」】
NEWSポストセブン
大分市立中学校の校内で生徒が暴行を受けている動画が、SNS上で拡散された(Xより)
《いじめ動画の保護者説明会“録音データ”を入手》「『先生に言ったら倍返しになるから言わないで』と…」子供の不安を涙ながらに訴える保護者の悲痛な声【大分市】
NEWSポストセブン
久米宏さんが瀬戸内寂聴さんに語っていた「妻・麗子さんへの深い愛」とは(共同通信社)
〈妻と結婚していなかったら…〉久米宏さんが瀬戸内寂聴さんに語っていた「妻・麗子さんへの深い愛」 学生時代に知り合い結婚…仕事も家庭も2人で歩んだパートナー
NEWSポストセブン
高市早苗氏(時事通信フォト)
《600億円が使われる総選挙開戦へ》党幹部も寝耳に水、高市首相“チグハグ解散”背景にある3つの要因「旧統一教会問題」「不祥事」「対中関係」 “自民党軽視”と党内から反発 
女性セブン
北海道日高町で店の壁の内側から20代の女性の遺体が見つかった事件(左・店舗のSNSより)
《北海道日高市・壁に女性看護師の遺体遺棄》「お袋には何かにつけてお金で解決してもらって感謝している」バー経営・松倉俊彦容疑者が周囲に語っていた“トラブルエピソード”
NEWSポストセブン
売春防止法違反(管理売春)の疑いで逮捕された池袋のガールズバーに勤める田野和彩容疑者(21)(左・SNSより、右・飲食店サイトより、現在は削除済み)
《不同意性交で再逮捕》「被害者の子が眼帯をつけていたことも」「シラフで常連にブチギレ」鈴木麻央耶容疑者がガルバ店員を洗脳し“立ちんぼ”強要…店舗関係者が明かした“悪評”
NEWSポストセブン
モデルやレースクイーンとして活動する瀬名ひなのさん(Xより)
《下半身をズームで“どアップ”》「バレないように隣のブースから…」レースクイーン・瀬名ひなのが明かした卑劣な”マナー違反撮影“、SNSの誹謗中傷に「『コンパニオンいらない』は暴論」
NEWSポストセブン
肺がんのため亡くなったフリーアナウンサーの久米宏さん(時事通信フォト)
【追悼】久米宏さん 本誌だけに綴っていた「完全禁煙」と「筑紫哲也さんとの“再会”」
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《鎖骨をあらわに予告》金髪美女インフルエンサーが“12時間で1000人以上と関係”の自己ベスト更新に挑戦か、「私が控えめにするべき時ではありません」と“お騒がせ活動”に意欲
NEWSポストセブン
美貌と強硬姿勢で知られるノーム氏は、トランプ大統領に登用された「MAGAビューティ」の一人として知られる(写真/Getty Images)
〈タイトスーツに身を包む美貌の長官〉米・ミネアポリスで移民当局が女性射殺 責任者のクリスティ・ノーム国土安全保障長官をめぐる“評価”「美しさと支配の象徴」
NEWSポストセブン
中国出身の女性インフルエンサー・Umiさん(TikTokより)
《クスリ漬けか…との声も》ギャル系美女が映っていた“異様な監視カメラ映像”とは》「薬物を過剰摂取し、足も不自由で、死んでしまう…」中国インフルエンサー(20)の住居の管理人が証言
NEWSポストセブン