ビジネス

「学資保険」は金融商品史上最強のネーミングと専門家が指摘

 あなたが入っている生命保険は果たして本当に必要なのかどうかや、保険会社の儲けの仕組みを解説した『生命保険の嘘』(小学館刊)を上梓した後田亨氏によると、「個人年金保険」という商品名は「そもそも老後の備えに保険がふさわしいかどうか」を消費者に考えさせないようにしているネーミングだという。同様の効果を発揮するのが「学資保険」という商品名だ。同書の共著者で行動経済学に詳しい大江英樹氏(オフィス・リベルタス代表)が保険商品のネーミングの秘密を解説する。

 * * *
 金融商品のネーミングを見ると、仕組みが複雑でニーズに適さない性格の商品でも、消費者に深く検討させずにいかに売るかということが考え抜かれて名付けられている気がします。

 例えば「学資保険」は、金融商品として史上最強のネーミングだと思います。これほど“目的”がわかりやすく、かつ情に訴える力を持ったネーミングはほかの金融商品ではなかなかありません。「これを買わない奴は親として失格だ」くらいのインパクトを持って消費者に迫ってきます。

 冷静に考えると、保険は「予期せぬ出来事」に対応するためにあるはずです。子供の入学は生まれた時からわかっていることですから、予期せぬ出来事でも「万が一」でもありません。保険を使うのではなく、子供の成長に合わせて貯金すれば済む話です。

 行動経済学の考え方に基づいて人の行動パターンを見ていくと、いくつかの原則が浮かび上がってきます。その中にヒューリスティックと呼ばれるものがあります。ごく簡単に言えば「イメージや経験則に基づいて判断する(してしまう)こと」を指しています。

 必ずしも正確かどうかはわからないが、何となくぴったりきそうだと判断する場面はよくあります。人間は、ややこしく複雑なことに直面すると、頭の中でそれを瞬間的に判断しようとする力が働きます。あまり深く考えずに物事を決めてしまう特性が人の脳には備わっているのです。

 例えばスーパーでシリアルを選ぶ時、健康に良さそうなものが欲しいと考えれば、カラフルなものではなく、何となく自然なイメージがある茶色のパッケージを選ぶ。厳密に栄養素や原材料を比較して買うのではなく、イメージでパッと棚から取る――それもヒューリスティックのひとつです。

 商品名は、その言葉が持つイメージを脳に強く印象付けるように働くため、消費者はいとも簡単にネーミングで判断してしまうのです。

※後田亨・大江英樹/著『生命保険の嘘』(小学館刊)より

関連キーワード

関連記事

トピックス

女優の趣里とBE:FIRSTのメンバーRYOKIが結婚することがわかった
女優・趣里の結婚相手は“結婚詐欺疑惑”BE:FIRST三山凌輝、父の水谷豊が娘に求める「恋愛のかたち」
NEWSポストセブン
タレントで医師の西川史子。SNSは1年3ヶ月間更新されていない(写真は2009年)
《脳出血で活動休止中・西川史子の現在》昨年末に「1億円マンション売却」、勤務先クリニックは休職、SNS投稿はストップ…復帰を目指して万全の体制でリハビリ
NEWSポストセブン
中川翔子インスタグラム@shoko55mmtsより。4月に行われた「フレンズ・オブ・ディズニー・コンサート2025」には10周年を皆勤賞で参加し、ラプンツェルの『自由への扉』など歌った。
【速報・中川翔子が独立&妊娠発表】 “レベル40”のバースデーライブ直前で発表となった理由
NEWSポストセブン
『ザ・ノンフィクション』に出演し話題となった古着店オーナー・あいりさん
〈一緒に働いている男性スタッフは彼氏?〉下北沢の古着店社長・あいりさん(20)が明かした『ザ・ノンフィクション』の“困った反響”《SNSのルックス売りは「なんか嫌」》
NEWSポストセブン
“凡ちゃん”こと大木凡人(ぼんど)さんにインタビュー
「仕事から帰ると家が空っぽに…」大木凡人さんが明かした13歳年下妻との“熟年離婚、部屋に残されていた1通の“手紙”
NEWSポストセブン
太田基裕に恋人が発覚(左:SNSより)
人気2.5次元俳優・太田基裕(38)が元国民的アイドルと“真剣同棲愛”「2人は絶妙な距離を空けて歩いていました」《プロアイドルならではの隠密デート》
NEWSポストセブン
『ザ・ノンフィクション』に出演し話題となった古着店オーナー・あいりさん
《“美女すぎる”でバズった下北沢の女子大生社長(20)》「お金、好きです」上京1年目で両親から借金して起業『ザ・ノンフィクション』に出演して「印象悪いよ」と言われたワケ
NEWSポストセブン
奈良公園で盗撮したのではないかと問題視されている写真(左)と、盗撮トラブルで“写真撮影禁止”を決断したある有名神社(左・SNSより、右・公式SNSより)
《観光地で相次ぐ“盗撮”問題》奈良・シカの次は大阪・今宮戎神社 “福娘盗撮トラブル”に苦渋の「敷地内で人物の撮影一切禁止」を決断 神社側は「ご奉仕行為の妨げとなる」
NEWSポストセブン
“凡ちゃん”こと大木凡人(ぼんど)さんにインタビュー
《“手術中に亡くなるかも”から10年》79歳になった大木凡人さん 映画にも悪役で出演「求められるのは嬉しいこと」芸歴50年超の現役司会者の現在
NEWSポストセブン
花の井役を演じる小芝風花(NHKホームページより)
“清純派女優”小芝風花が大河『べらぼう』で“妖艶な遊女”役を好演 中国在住の実父に「異国まで届く評判」聞いた
NEWSポストセブン
第一子を出産した真美子さんと大谷
《デコピンと「ゆったり服」でお出かけ》真美子さん、大谷翔平が明かした「病院通い」に心配の声も…出産直前に見られていた「ポルシェで元気そうな外出」
NEWSポストセブン
2000年代からテレビや雑誌の辛口ファッションチェックで広く知られるようになったドン小西さん
《今夏の再婚を告白》デザイナー・ドン小西さんが選んだお相手は元妻「今年70になります」「やっぱり中身だなあ」
NEWSポストセブン