コストは建物の大きさにもよるが、ざっと建築費の1割。地下の1フロア分を使うため、建物が高くなればなるほど、コストの割増分を吸収できる。免震ゴムを扱う企業は数社あるが、同社のシェアは40~50%。今でこそ注目されている商品だが、「いつ事業が閉鎖されるかわからない時期もありました」と語るのは化成品・インフラ事業本部の部長で工学博士でもある鈴木重信氏(57)。
免震ゴムの歴史は古く、1981年に10トンほどのセラミック製変電設備を地震から守る目的で研究が始まった。鈴木氏はパイオニアとして最初の研究段階から従事するこの道一筋の技術者である。その後ゼネコンや大学などとの共同研究を続け、1980年代半ばには戸建住宅用・ビル用の免震ゴムを相次いで製品化した。
「面白い技術だ」と、ゼネコンをはじめ多くの関係者が言ってくれた。しかし、年間10棟前後しか受注がない時期が続く。鈴木氏が続ける。
「3回ほど、もうやめようかという話があった。それでも世の中に必要な事業だと思って続けていると、国のプロジェクトに組み込まれるなどして何とか継続されました」
流れが変わったのは1995年の阪神・淡路大震災だった。今でこそ「毎年2ケタ成長」(白坂氏)で伸び続ける事業となっているが、それでもまだ新築される建物全体からすれば、採用は1%にも満たない。「免震ゴム」の存在をどう広く認知させていくかが課題となる
※SAPIO2014年4月号