国内

子供の健康考え福島県外避難の人を「逃げた人」とする風潮も

 現在、福島県内の仮設住宅などで生活する避難者は約8万7000人。福島県外に避難した人は約4万8000人に達する。これだけの人が住まいと暮らしを失った3.11から3年経っても、生活再建はままならない。

 福島県郡山市に住む野口時子さん(49才)はわが子を思い、心を痛める母親のひとりだ。

 夫が転勤族だった野口さんは、10年ほど前に郡山市に移り住み、この地に自宅を購入した。原発事故後、一時県外に避難したが、福島第一原発から60kmほど離れた郡山市に戻ってきた。

「ずいぶん悩みましたが、自宅を買っていたし、子供を転校させたくなくて郡山市に戻りました。本当は県外避難を続けたいけど、家や生活があるからこの場を離れられないかたも多いんです」(野口さん)

 野口さんは2011年7月、子供の健康を心配するママ友たちと市民団体「3a!安全・安心・アクションin郡山」を設立した。「3a」とは、安全・安心・アクションの頭文字。同団体では、子育てに不安を持つ母親の座談会を開いたり、西日本産の野菜の販売会を開いたりしている。

「自主避難から郡山に戻ってくるお母さんもいて、会の参加者は増えています。先日は妻や子供が県外に避難して、単身で郡山に住むお父さんたちの座談会を開き、盛況でした」(野口さん)

 郡山市には国による避難指示は出なかったが、野口さんは子供への影響を考えて、今も洗濯物を外に干さず、外遊びを控えさせている。

 一方で市民の中には「もう安全だから」となんら気にせず生活する人もいる。周囲との温度差を感じずにはいられない野口さんの心は、今も揺れ動いている。

「子供の健康を考えて県外に避難した人を『逃げた人』とする風潮が地元にはあります。一方で避難した人からは、『なぜ残っているのか』と冷たく言われることもあります。

 確かに福島県の県民健康管理調査では、原発事故後に甲状腺がんを発症した子供が高い割合で増えています。原発事故との因果関係はないとされますが、“明日はわが子かもしれない”という強い恐怖感があります」(野口さん)

 この先もこの地で暮らすかどうかは不明だと野口さんは打ち明ける。

「この4月から中3の長女はあと1年我慢して郡山で過ごさせて、高校から県外に出すつもりでいます。私もこの先一生、ここに住むとは決めていません。こんな状態で原発を再稼働するなんて本当に信じられません」(野口さん)

※女性セブン2014年3月20日号

関連キーワード

トピックス

麻薬取締法違反容疑で家宅捜査を受けた米倉涼子
「8月が終わる…」米倉涼子が家宅捜索後に公式SNSで限定公開していたファンへの“ラストメッセージ”《FC会員が証言》
NEWSポストセブン
巨人を引退した長野久義、妻でテレビ朝日アナウンサーの下平さやか(左・時事通信フォト)
《結婚10年目に引退》巨人・長野久義、12歳年上妻のテレ朝・下平さやかアナが明かしていた夫への“不満” 「写真を断られて」
NEWSポストセブン
人気格闘技イベント「Breaking Down」に出場した格闘家のキム・ジェフン容疑者(35)が関税法違反などの疑いで逮捕、送検されていた(本人SNSより)
《3.5キロの“金メダル”密輸》全身タトゥーの巨漢…“元ヤクザ格闘家”キムジェフン容疑者の意外な素顔、犯行2か月前には〈娘のために一生懸命生きないと〉投稿も
NEWSポストセブン
司組長が到着した。傘をさすのは竹内照明・弘道会会長だ
「110年の山口組の歴史に汚点を残すのでは…」山口組・司忍組長、竹内照明若頭が狙う“総本部奪還作戦”【警察は「壊滅まで解除はない」と強硬姿勢】
NEWSポストセブン
バスツアーを完遂したイボニー・ブルー(インスタグラムより)
《新入生をターゲットに…》「60人くらいと寝た」金髪美人インフルエンサー(26)、イギリスの大学めぐるバスツアーの海外進出に意欲
NEWSポストセブン
大谷が購入したハワイの別荘の広告が消えた(共同通信)
【ハワイ別荘・泥沼訴訟に新展開】「大谷翔平があんたを訴えるぞ!と脅しを…」原告女性が「代理人・バレロ氏の横暴」を主張、「真美子さんと愛娘の存在」で変化か
NEWSポストセブン
小林夢果、川崎春花、阿部未悠
トリプルボギー不倫騒動のシード権争いに明暗 シーズン終盤で阿部未悠のみが圏内、川崎春花と小林夢果に残された希望は“一発逆転優勝”
週刊ポスト
ハワイ島の高級住宅開発を巡る訴訟で提訴された大谷翔平(時事通信フォト)
《テレビをつけたら大谷翔平》年間150億円…高騰し続ける大谷のCMスポンサー料、国内外で狙われる「真美子さんCM出演」の現実度
NEWSポストセブン
「第72回日本伝統工芸展京都展」を視察された秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年10月10日、撮影/JMPA)
《京都ではんなりファッション》佳子さま、シンプルなアイボリーのセットアップに華やかさをプラス 和柄のスカーフは室町時代から続く京都の老舗ブランド
NEWSポストセブン
兵庫県宝塚市で親族4人がボーガンで殺傷された事件の公判が神戸地裁で開かれた(右・時事通信)
「弟の死体で引きつけて…」祖母・母・弟をクロスボウで撃ち殺した野津英滉被告(28)、母親の遺体をリビングに引きずった「残忍すぎる理由」【公判詳報】
NEWSポストセブン
部下と“ラブホ密会”が報じられた前橋市の小川晶市長(左・時事通信フォト)
《黒縁メガネで笑顔を浮かべ…“ラブホ通い詰め動画”が存在》前橋市長の「釈明会見」に止まぬ困惑と批判の声、市関係者は「動画を見た人は彼女の説明に違和感を持っている」
NEWSポストセブン
バイプレーヤーとして存在感を増している俳優・黒田大輔さん
《⼥⼦レスラー役の⼥優さんを泣かせてしまった…》バイプレーヤー・黒田大輔に出演依頼が絶えない理由、明かした俳優人生で「一番悩んだ役」
NEWSポストセブン