早速〈ガリチョコバー〉のCMに起用された山田。夏でも溶けにくい画期的な新商品を颯爽と齧り、〈山田も驚くシンショッカン!〉のコピーは子供たちに大人気だ。一方、山田ばかり目立って商品の魅力が伝わらないと社内の評価は低く、CMは即打ち切り。プロジェクトは暗礁に乗り上げた。
かつて伝説のヒット商品〈チョコカプセル〉を手がけた琴平や、商品開発部への異動を夢見ながら山田のマネージメントに奔走する〈水嶋里美〉。社内外の調整役に徹し、胃薬が手放せない〈峰さん〉や、溶けないチョコの開発者〈小杉〉等、様々な人間の思いに触れる中で山田は思うのだ。
〈ぼくらが何気なく口にしている“キャラ”とは、性格や個性というより、人との関わりの中での立場とか立ち位置のようなものではないか〉〈みんな場面ごとに何かのキャラを演じている。いや、生きている〉〈“自分らしさ”はひとつではない〉
「僕らはともすれば相手の悪い面ばかり見たり、自分と他人を比べて嘆いたりするけれど、それこそ自分の人生を自ら貶めていると思う。キャラが一つでないことに僕はむしろ希望を感じるし、お互い一長一短ある者同士が世代や能力の違いを逆に力に変えることだってできるはずなんです。
例えば僕ら下っ端が何を言っても聞いてくれない人が、峰さんみたいに〈端的に言うと〉と言いつつ全然端的じゃないオジサンには心を開いたり、社内の〈おばちゃん情報局〉こと〈市村さん〉が大活躍したり、その人なりの良さや強みを持ち寄って補い合える組織が、僕はいい組織だと思う。そしていきなり全社は無理でも、〈半径五メートル〉から変えていく改革の旗印が、ゆるキャラ山田なんです」