ライフ

【著者に訊け】安藤祐介 会社員の奮闘描いた『おい!山田』

【著者に訊け】安藤祐介氏/『おい!山田』/講談社 1400円+税

 子供の頃からグズと罵られ、就職すればすぐクビになるダメ男が、なぜか一流広告代理店に入社。社員のストレス解消を一身に担う“取り締まられ役”として社業発展に大いに貢献する(?)第1回ドラマ原作大賞受賞作『被取締役新入社員』(2008年)を始め、ありそうであり得ない設定や、ふざけているようで意外にも熱い物語が、自身も地方公務員として働く作家・安藤祐介氏の作品に共通する魅力だ。

 最新作『おい!山田』でも、〈おい山田、お前今日からゆるキャラな〉という理不尽すぎる任務をムチャ振りされた大翔製菓の社員〈山田助〉らの奮闘をコミカルに描き、読み口はあくまで軽い。それでいてどこか感動的なのは、彼らが〈DO〉──すなわち「行動」を身上に仲間を信じて戦う〈戦友〉だからだ。安藤氏はこう語る。

「名付けてムチャ振りシリーズ、第3弾です(笑い)。僕もムチャ振りは結構される方なんですが、そのあり得ない仕事を通じて主人公が成長したり、ビリヤードみたいに誰かが動くことで周囲に及ぼす影響や情景を僕は書きたいんですね。一見ムチャな設定はそれを書くためのフックであって、いろんな人間が一つの職場で働いたり、あるいはクビになることも含めて、僕は一つの〈縁〉だと思うので」

 自身、新卒で入った学習塾を過労で退社し、某業界新聞に入社するが試用後に突然解雇。その後は上司についてIT系ベンチャーを転々とし、29歳を前に心機一転、公務員試験を受けた波瀾の職業遍歴を持つ。ちなみに表紙のモデルは刊行前に公募した山田さんの中から選ばれた福井県の会社員、山田貴彦さん(30)。

「スポーツマンらしい笑顔と体格が中学高校と野球部だった助のイメージにピッタリで、もう即決でした」

 29歳、練馬出身で、大阪の物流部に勤務する山田が、上層部の肝煎りでスタートしたご当社キャラプロジェクトの社内公募に志願したのも実は野球のため。東京に戻って自身の古巣〈練馬フルスインガーズ〉でコーチを務めるためだった。

 が、〈金出さず、人出さず、成果出せ〉が上の方針で、彼が広報宣伝部に異動早々、〈琴平部長〉に命じられたのは〈ゆるキャラそのもの〉。背広姿の社員を素顔のまま広告塔に仕立てる常識破りのPRにいきなり担ぎ出され、それでもめげない彼は、全社向けにこんなメールを送るのだ。〈題名:ゆるキャラ山田、はじめました〉!?

「少年野球時代から〈振らなきゃ当たらない、見逃し三振だけはするな〉と叩き込まれてきた彼のモットーは、何事も〈フルスイング〉。僕も今の職場ではどんなに面倒臭い仕事を頼まれても即行動するようにしていて、つい忙しくて『チッ』って思う時は〈まずは四の五の言わずにやってみよう〉と、山田のフルスイング主義を真似したりします」

関連記事

トピックス

《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
女性セブン
水原一平氏と大谷翔平(時事通信フォト)
「学歴詐称」疑惑、「怪しげな副業」情報も浮上…違法賭博の水原一平氏“ウソと流浪の経歴” 現在は「妻と一緒に姿を消した」
女性セブン
『志村けんのだいじょうぶだぁ』に出演していた松本典子(左・オフィシャルHPより)、志村けん(右・時事通信フォト)
《松本典子が芸能界復帰》志村けんさんへの感謝と後悔を語る “変顔コント”でファン離れも「あのとき断っていたらアイドルも続いていなかった」
NEWSポストセブン
大阪桐蔭野球部・西谷浩一監督(時事通信フォト)
【甲子園歴代最多勝】西谷浩一監督率いる大阪桐蔭野球部「退部者」が極度に少ないワケ
NEWSポストセブン
がんの種類やステージなど詳細は明かされていない(時事通信フォト)
キャサリン妃、がん公表までに時間を要した背景に「3人の子供を悲しませたくない」という葛藤 ダイアナ妃早逝の過去も影響か
女性セブン
創作キャラのアユミを演じたのは、吉柳咲良(右。画像は公式インスタグラムより)
『ブギウギ』最後まで考察合戦 キーマンの“アユミ”のモデルは「美空ひばり」か「江利チエミ」か、複数の人物像がミックスされた理由
女性セブン
30年来の親友・ヒロミが語る木梨憲武「ノリちゃんはスターっていう自覚がない。そこは昔もいまも変わらない」
30年来の親友・ヒロミが語る木梨憲武「ノリちゃんはスターっていう自覚がない。そこは昔もいまも変わらない」
女性セブン
水原氏の騒動発覚直前のタイミングの大谷と結婚相手・真美子さんの姿をキャッチ
【発覚直前の姿】結婚相手・真美子さんは大谷翔平のもとに駆け寄って…水原一平氏解雇騒動前、大谷夫妻の神対応
NEWSポストセブン
大谷翔平の通訳・水原一平氏以外にもメジャーリーグ周りでは過去に賭博関連の騒動も
M・ジョーダン、P・ローズ、琴光喜、バド桃田…アスリートはなぜ賭博にハマるのか 元巨人・笠原将生氏が語る「勝負事でしか得られない快楽を求めた」」
女性セブン
”令和の百恵ちゃん”とも呼ばれている河合優実
『不適切にもほどがある!』河合優実は「偏差値68」「父は医師」のエリート 喫煙シーンが自然すぎた理由
NEWSポストセブン
大谷翔平に責任論も噴出(写真/USA TODAY Sports/Aflo)
《会見後も止まらぬ米国内の“大谷責任論”》開幕当日に“急襲”したFBIの狙い、次々と記録を塗り替えるアジア人へのやっかみも
女性セブン
違法賭博に関与したと報じられた水原一平氏
《大谷翔平が声明》水原一平氏「ギリギリの生活」で模索していた“ドッグフードビジネス” 現在は紹介文を変更
NEWSポストセブン