問題にすべきは、警察が「大きなチャンス」を自らの手で潰したことである。
「最大の原因は警察内部の足の引っ張り合いでしょう。たとえば、1984年6月の丸大食品への脅迫。列車を使った現金の受け渡しに際して、合同本部は、有力な容疑者である『キツネ目の男』を列車の中と降車後の京都駅で視認しています。状況を知った刑事警察の捜査1課は、『捕捉(逮捕せよ)!』と無線で叫びましたが、現場からは『追尾(尾行中)』という報告しか上がってこなかった」(大谷氏)
容疑者を視認し「捕捉」の指令まで出ていたにもかかわらず、どうして捜査員は身柄確保に踏み切らなかったのか。
「それは、現場を仕切っていたのが刑事警察ではなく公安警察だったからです。自分たちのセクションの尾行能力を過信し、『キツネ目の男が仲間と合流したところで一網打尽にすればいい』と欲を出した。結局、京都駅構内で対象を見失い、押さえられたはずの身柄まで逃してしまった」(大谷氏)
※SAPIO2014年5月号