そんな中で登場したレーガンはそれまでの政権とは180度転舵し、減税と行政のスリム化、そして規制緩和を掲げた。議会や専門家の反対に屈することなくレーガンは所得税の最高税率を70%から段階的に28%に引き下げるといった大胆な減税を断行したのだ。
その効果は目覚ましいものだった。レーガン政権一期目の後半にはアメリカ経済は復活の軌道に乗り始め、1984年に経済成長率を7.2%まで急伸させた(就任前の1980年はマイナス成長だった)。
またレーガンは8年間の任期を通じて減税という政策の軸を変えなかったが、その間にアメリカ政府の歳入は24%も増加したのだ。逆に日本は1997年に消費税を3%から5%に引き上げたが、それ以降で政府の歳入が1997年の水準を上回ったことは一度もない。これが世界の常識である。
一方で、レーガンはソ連に対抗するために軍事支出を増やしたので財政赤字は拡大してしまった。それをもってレーガノミクスを批判する人間は多いが、それはおかしい。
軍拡競争に対応できなくなったソ連が西側に歩み寄ったことで1989年に冷戦は終結。その後、1990年代にアメリカが「平和の配当」による経済成長を遂げたことを考えれば、やはりレーガンの方針はアメリカ国民に多大な利益をもたらしたと言えるだろう。
※SAPIO2014年5月号