ファッションプロデューサーの植松晃士さんが、おばさまたちが美しく生きるためのアドバイスをしてくれます。今回は「女性の振る舞い」についてのお話です。
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以下は先日、あるパーティーで私が目撃した出来事です。その女性は、多分、パーティー出席者の中で最年長者だったと思われます。仮にPさんといたしましょう。着席の会でしたので、主催者のお隣に座っておられました。
「乾杯!」と、皆さまで和やかにグラスを合わせたその時です。Pさんは「私、忘れないうちに話しておきたいことがあるのよ~」と大きな声を発した後で主催者にだけ聞こえる声で、こしょこしょと内緒話をはじめたのです。
もちろん、私をはじめ出席者はみんな、内心では呆れておりましたが、なにしろ年長者のなさること。誰も何も申せません。お隣同士、初対面のかたも多数だったため、「どちらからいらしたんですか?」なんて、主催者不在のまま、ぎこちない会話を続けたのでした。
たぶんPさんは、ご自分が図々しいというか、はっきりいって傍若無人な振る舞いをしていたことを、自覚しておられたと思います。なぜなら、内緒話が終わった後、みんなの顔を見渡し「(主催者さまを)独占しちゃって、ごめんなさいね~」と満面の笑みでおっしゃいましたから。
このように「少しくらい、人に迷惑かけても、私はへっちゃらよ」的な振る舞いをすることを、“すっとぼけの術”と申します。
要するに、あえて空気を読まないワザです。このケースでは、「ど~せ私は年上だから、皆さん仕方ないと思って許してくれるハズ」と、自分の年齢を免罪符にして、好き勝手に振る舞っていたわけですね。
確かに、年長者のかたがたは、私たちにとっては人生の先輩であり道先案内人。だからこそ「目上のかたは敬わなければ」という周囲の好意を逆手にとって、自分勝手な振る舞いをしていいわけがありません。
私自身、年齢を重ね、最近では何かのお集まりでも「私が最年長?」という機会が増えてまいりました。実際、周囲のかたがたが気を使ってくださるのが、哀しいくらい、伝わってきます。
「年長者」って裏を返せば、しわやシミは多くて、正直いって、「お気の毒」とも思われているのよ。この事実をオバさま本人が自覚しないといけないと思うのです。そして、周囲が気を使ってくださればくださるほど、謙虚にならないと年長者として敬われる資格がない、といったら言いすぎかしら。
実際、その日も会が終わった後、主催者のかたから「本当にごめんなさいね。もうPさんは二度と、お呼びしないから」と耳打ちされました。人生の達人ほど、“微笑みの術”でスルーしながら、内心では怒っているものです。
オバさん、万歳!
※女性セブン2014年6月12日号