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日露戦争後の日本 看護服着た娼妓登場の元祖「イメクラ」も

 世界でも類を見ない独自の発展を遂げ、市場規模5兆円ともいわれる日本の風俗産業。そのルーツは一体どこにあったのか。

 売春をしていた女性は古くからいたと考えられるが、性を生業にする女性の存在が文献によって認められるのは平安時代中期以降。この頃から「遊女」についての記述が見られるようになる。

 そして、お上によって「公娼制度」が確立されたのは、今から400年前。自らも好色として知られた豊臣秀吉の時代のことだった。

『性の用語集』と『性的なことば』(いずれも講談社現代新書)の著者である国際日本文化研究センター教授の井上章一氏が解説する。

「秀吉が京都や大阪の道頓堀などに公認の遊郭をつくり、それ以外の私娼を取り締まったのが公娼制度の始まりといわれています。売春業者を1か所に集めて運営するようになるのはフランスでもナポレオンの時代(19世紀初頭)になってからですから、世界史的にも風俗産業の先駆けだったといえます」

 その起こりから、日本の風俗産業は世界をリードしていたのである。秀吉が整備した公娼制度は江戸時代にも引き継がれ、吉原(東京)・島原(京都)・大阪新町などの遊郭街を生んでいく。

『日本売春史 遊行女婦からソープランドまで』(新潮社刊)などの著書がある比較文学者の小谷野敦氏が語る。

「遊郭の認知度が高まるにつれ、遊女たちの中から名妓とされる者たちが出てきて、そうした娼妓たちについての『名妓伝』もいくつも書かれています。これはおそらく、一般向きというよりはコアなファンへの業界誌といった感じでしょう」

 名妓のなかでも特に名高かった江戸の高尾太夫、京の吉野太夫については数多くの名妓伝が残されている。

 例えば、『色道大鏡』第十七巻「扶桑烈女伝」には吉野太夫についての<活然として気を恣にす。且に情を下さんとするに要有り(生き生きと人の心を虜にしてしまう。情けをかけるにあたっては、独特のものをもっている)>などの評が記されている。

 このように発展を遂げた日本の遊郭だったが、明治になると、人権擁護の観点から廃娼運動が盛り上がる。それを受け、政府は娼妓取締規則を制定し、満18歳以上の女性でなければ娼妓として働くことができないと定めた。定期的な健康診断も義務づけられ、近代公娼制度が確立することになる。

「日露戦争後には、看護服を着た娼妓が登場して全国的な流行になるなど、今でいう『イメクラ』的なものも登場していました。一方で、明治末期からは『カフェ』ができ始めました。今のカフェとは違い、女給が隣に侍って酒も出るというキャバレーの前身になったといわれているもので、疑似恋愛の新たな舞台となったのです」(小谷野氏)

 このように多様化する日本の風俗産業であったが、昭和の敗戦を迎えたことで、消滅の危機にさらされる。GHQが公娼制度の廃止を要求したためだ。

※週刊ポスト2014年6月13日号

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