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前立腺肥大症治療 NO作用強めるPDE5阻害薬承認で選択肢拡大

 前立腺は膀胱の下の尿道を取り囲むクルミ大の臓器だ。前立腺は精子の運動を助ける前立腺液を作り、筋肉を収縮させ精液を押し出すだけでなく、括約筋(かつやくきん)とともに尿道を締めて尿漏れを防いでいる。

 前立腺肥大症は、肥大した前立腺が尿道を圧迫するために症状が出る。尿が出にくくなる、突然尿が出なくなる尿閉などの排尿障害や、急に排尿したくなり我慢ができず夜中に何度もトイレに行くなど、膀胱の働きが過敏になることで起こる蓄尿障害もある。40代後半から始まり、60代では約半数に見られる。

 山梨大学医学部長で泌尿器科の武田正之教授に聞いた。

「前立腺肥大症の原因として加齢、男性ホルモンの減少、炎症などが考えられています。排尿障害は、肥大した前立腺に圧迫されて尿道が閉塞するだけでなく、膀胱の筋肉自体が弱くなり、尿を押し出す力が減るなどの要因が重なって起こります」

 新たに保険承認されたのが一酸化窒素(NO)の作用を強くするPDE5阻害薬(タダラフィル)だ。NOは主に神経で産生されて前立腺や血管の平滑筋(へいかつきん)に入り、筋肉を緩ませるが、その働きを阻害し緩んだ筋肉を再び収縮させる酵素がPDE5だ。

「PDE5阻害薬は、陰茎海綿体の平滑筋を緩めて血流を改善するため、最初は健康保険ではなく、私費でのED(勃起障害)治療用に承認されていました。今回、健康保険承認されたタダラフィル(商品名ザルティア)は、このED治療薬と同じ成分です。

 排尿障害治療にはED治療の2分の1から4分の1の1日1回5ミリグラムを服用します。膀胱や前立腺などの血流改善による効果も期待できるのではないかと考えています」(武田教授)

 この「ザルティア」の処方には、医師による前立腺肥大症の検査・診断が必要である。α1遮断薬との併用も可能だが、血圧低下の危険性もあるので注意が必要だ。

■取材・構成/岩城レイ子

※週刊ポスト2014年6月20日号

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