「あってしかるべき」の中心的な要素が、足りなかったドラマ。まだあります。例えば6月8日放送の「みをつくし料理帖」第2弾(テレビ朝日系)。
料理の話なのに、何かが足りない。何だろう? 「料理のシズル感を出すために、あえてごまかしのきかないハイビジョン撮影を選択しました。クリアで自然な色味にこだわりました」(「オリコンスタイル」)と語っていたプロデューサー。
けれども冒頭から延々と説明セリフが続いていく。どうにもシズル感までたどりつけなかった。匂い、気配、音。言葉に頼らず、もっともっと五感を揺さぶるような映像や演出が見たい。
そして、3つ目の残念は「ルーズヴェルト・ゲーム」(TBS系日曜9時)。前作の「半沢直樹」が「倍返し」という明快なテーマでぐんぐん展開したのに比べて、今回のドラマは足りません。爽快さが。
会議と野球のシーンばかりが目につく。あってしかるべき「痛快」さがどうにももの足りない。「スカッ」とする瞬間こそ、視聴者が待っていたものなのに。
前作「半沢直樹」の舞台だった「銀行」のわかりやすさに比べ、今回の舞台は電子部品メーカー。イメージセンサーという専門的な部品の開発をめぐる話。普通の生活からは遠くて想像しにくい。もやもやする原因の一つでしょう。
その上、野球というテーマにもわかりにくさが潜む。草野球経験を持つ男性たちはとっては、とてもわかりやすいのかもしれませんが、お茶の間の半分は女性。多くの女にとって、野球をめぐる興奮は伝わりにくい。ピンとこないし興味を持ちにくい。そのあたり前作ほど視聴者層が伸びない原因かも。
脚本、演出、役者が三位一体となりそれぞれのクオリティが揃ってこそ、多くの視聴者がついてくる時代。ちょっと有名なアイドルやジャーニーズ系が主役なら見てもらえるとか、ベストセラーや人気スポーツを使えば大丈夫、といった時代は終わりつつあるのかもしれません。