──Vシネのリアルさって、現場にホントに怖い人がいたりする怖さもありますよね。
哀川:ああ、あるある。目でわかるよ。芝居できないから。マジ怒ったりするからね。「そんなんじゃねえんだよ! バカにしてんのかコラ! 遠藤憲一、殺してやる!」って、「えっ、どういうこと?」みたいな。
──話の通じない人がいるなと。
哀川:すごいよね(笑)。でも監督が一番暴れん坊なんだよ、じつは。三池(崇史)さんも半端じゃないよ。三池さんのアクションは半端じゃない。うまいし、速いし。あと助監督がお巡りに捕まったりしてるのをもらい受けに行くときなんかの芝居が半端じゃないの、監督は。ホントは監督が悪くて助監督が捕まってるのに、バッと興奮して「なんでそこまでやるんだ!」とか言って殴って(笑)。
──結局、撮影しているとそういうふうに警察沙汰になっちゃうことが多いわけですね。
哀川:だって無許可で撮るんだもん。文句言われたら助監督が「すみません、私が」って泣いて、「引っ張れ引っ張れ。その間に撮っちゃうぞ」みたいな。
──泣いてるいまがチャンス! っていう。
哀川:そう(笑)。でも、その人間味がVシネマだと思うよ。感情がもろ出てくるから。だから、打ち上げがむちゃくちゃ面白いもん、絶対ケンカだから。普段は仕事だから抑えてるわけだけど、酒が入るともう止まらないのよ。最初は仲がいいのに、だんだんすごいことになってるんだよ。「表出ろコノヤロー!」とか始まって、すごいから。そしたら殺陣師の大活躍みたいな。
◆哀川翔(あいかわ・しょう)/1961年、徳島県生まれ。俳優。1984年から一世風靡セピアのメンバーとして活躍し、『前略、道の上より』でレコードデビュー。その後、テレビドラマや映画を舞台に俳優として活躍し、1990年代には『ネオチンピラ 鉄砲玉ぴゅ~』シリーズを皮切りに多数のVシネマに出演した。2005年に日本アカデミー賞優秀主演男優賞を受賞し、映画やバラエティ番組など多方面で活躍。現在、来春公開予定の芸能生活30周年記念映画(品川祐監督)を撮影中。
撮影■藤岡雅樹
※週刊ポスト2014年7月11日号