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ライフネット生命社長「決断速度は大切だが成長速度求めぬ」

 岩瀬大輔氏は1976年、埼玉県生まれ。東京大学法学部卒業後、ボストン・コンサルティング・グループなどを経てハーバード大学経営大学院に留学。2006年、ライフネット生命の立ち上げに携わり、2008年に生命保険業免許取得、副社長就任。ネット専業で保険料の安さとシンプルさを売りにする同社は日本で74年ぶりに設立された独立系生保となった。岩瀬氏は昨年6月、代表取締役社長に就任。著書に『仕事でいちばん大切な人を好きになる力』(講談社刊)などがある岩瀬氏にこれまでの同社とこれからの同社について話を聞いた。

──「生命保険をわかりやすく、安くて便利に」というメッセージを打ち出して誕生したライフネット生命は開業から6年、知名度も少しずつ高まっている。どう自己評価するか。

岩瀬:ようやく1~2合目といったところですね。明治期の1880年、日本に生命保険が上陸してから130余年。6年ではなかなか変わりません。共に立ち上げた出口(治明・会長兼CEO)が常々口にしていることですが、私たちの目標は「100年後に世界一になる」ことです。

──商品自体の安さやわかりやすさは経済誌などで評価されているが、現状では保有契約件数が20万件を突破したところで、国内で20位にも入っていない。「世界一」はかなり遠い目標に聞こえる。

岩瀬:正直に言うと、私も最初に出口から「世界一」と言われた時、ピンと来ませんでした(笑)。でも一昨年の5月、バルセロナのサグラダ・ファミリアを見た時に、実感したんです。ご存じのように、ガウディが設計したあの教会は1882年の着工以来、いまだに造り続けています。

 本当に大きなものは、一世代では無理なのでしょう。我々が実現したいことは一朝一夕にできるものではないし、すぐに浸透するものでもない。自分たちをガウディに喩えるのはおこがましいですが、「本当に消費者目線の保険を作る」というミッションは100年後でも通用するものだと自信を持って言えます。

──経営にスピードが求められる時代、「100年後」とは悠長では?

岩瀬:IT系の起業家の友人が多くいるのですが、彼らからは一様に「岩瀬が羨ましい」と言われます。IT系はまさにスピード勝負。3年後にどうなっているかわからない。一方、保険はスピード勝負の業界ではない。「長く坂を上り続けられるから羨ましい」というわけです。

 もちろん、短期間で会社を大きくすべきだという意見もあるでしょう。しかしそうするためには、多大な宣伝費をかけ、多くの営業職員を使って消費者にプッシュする必要があります。それではコストがかかって保険料に跳ね返り、「消費者目線」の保険ではなくなってしまいます。決断のスピードは大切ですが、成長スピードは求めません。

※SAPIO2014年8月号

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