投資情報会社・フィスコ(担当・小瀬正毅氏)が、7月21日~7月25日のドル・円相場の見通しを解説する。
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今週のドル・円は、ウクライナ情勢や中東情勢に警戒しつつ、米国と日本のインフレ率に注目する展開となる。ウクライナでの紛争が激化した場合、イラクが内戦に陥った場合、パレスチナ紛争が激化した場合は、リスク回避の円買い圧力が強まることになる。
しかしながら、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)による外貨建て資産への投資増額期待からドルは下げ渋る展開が予想される。
【米国6月のインフレ率】(22日)
米国の6月のコア消費者物価指数は、前年比+2.0%と予想されており、5月の前年比+2.0%から変わらずと見込まれている。米国のコアインフレ率の上げ渋りは、連邦公開市場委員会(FOMC)による早期利上げ観測後退となることで、ドル売り要因となる。
【日本の6月貿易赤字】(24日)
日本の6月の貿易赤字は、-6653億円と予想されており、5月の-9108億円からの減少が見込まれている。しかしながら、季節調整後の貿易赤字が1兆928億円と予想されており、原発稼動停止、原油価格上昇による日本の貿易赤字体質は変わらないため、円売り圧力が継続する。
【中東の地政学的リスク】
イラクでは、アルカイダ系の武装組織「イラク・シリア・イスラム国」が樹立したイスラム国と、イラク、イラン、シリア、サウジアラビアとの緊張が高まりつつある。パレスチナでは、イスラエルによるガザ地区への地上侵攻により、中東全域での地政学的リスクが高まりつつある。イラクが内戦に陥った場合、原油価格が上昇することで、原発稼動停止で原油輸入の依存度が高い日本経済にはマイナス要因、貿易赤字の拡大により円安要因となる。
【ウクライナ紛争】
ポロシェンコ・ウクライナ政権と親ロシア武装勢力との武力衝突が激化しつつあり、欧米による対ロシア制裁の拡大、ロシアによる対抗措置、マレーシア航空機の撃墜など、ウクライナ情勢が緊迫の度合いを増しつつある。ウクライナ東部での紛争が激化した場合、リスク回避の円買い圧力が強まることになる。
【日本の6月のインフレ率】(25日)
日本の6月のコア消費者物価指数は、前年比+3.3%と予想されており、5月の前年比+3.4%からの低下が見込まれている。日銀が試算している消費増税の影響は、+1.7%なので、消費増税を除いたコアインフレ率は、前年比+1.6%へ低下することになる。日本のコアインフレ率の上げ渋りは、日本銀行による追加緩和観測を高めることになるため、円売り要因となる。
7月21日-25日に発表予定の主要経済指標のポイントは次の通り。