国際情報

上海福喜食品勤務男性 肉が落ちても床はキレイだから大丈夫

 今回の中国汚染食品問題の特徴は、国際的な大企業が被害者ではなく「加害者」となり、謝罪に追い込まれたことだ。

 過去1年間で中国の食品会社「上海福喜食品」から日本に輸入された期限切れ鶏肉などの食肉加工品は約6000トン。そのすべてが日本マクドナルドとファミリーマートに流通していた。もはや中国産のリスクは国民の共通認識だ。信じていたが「少し騙された」では済まない。汚染が相次ぐのは、そうさせる風土、土壌があるからなのだ。

『中国人は雑巾と布巾の区別ができない』(宝島社新書)などの著書があるジャーナリスト・西谷格氏が中国・上海で取材を進めると、呆れる実態が見えてきた。

 件の上海福喜食品で働いていた40代の中国人男性は、ケロリとした表情で言い放った。

「落ちた肉を拾ったこと?そりゃあるよ。毎日1~2回は当たり前だね。もちろんみんなやっていた。床は綺麗だから大丈夫。毎日熱湯で流しているし、拾った肉はアルコールスプレーをかけて戻すしね」

 30代女性職員が担当していたのは検品作業。しかしそれは品質チェックとはかけ離れていた。

「私がやっていたのは、ベルトコンベアに乗ったナゲットの中から、形の悪いものを探して取り除く作業でした。はじかれた不合格品はラインの最初に戻す。解凍肉と混ぜてもう一度ミンチにするためです」

 結局、粗悪品ももう一度挽き肉にしてしまえばわからないということ。ここまでのモラルハザードが生じている工場に、食の安全など望むべくもない。

 今回の騒動は、中国・上海のテレビ局「東方衛視」のスクープが発端だった。同局のクルーが2か月にわたって上海福喜食品に潜入、加工工場での不衛生な実態や、期限切れ肉の使用を暴いたという。

 この発覚の経緯からして「異例中の異例」だった。中国に詳しいジャーナリストがいう。

「全メディアが共産党の監視下にある中国において、自国の恥部を暴く報道が国内メディア主導でなされることは異例中の異例。上海福喜食品がアメリカの食肉大手OSIグループの子会社だったこともあり、中国側に『アメリカ叩き』の狙いがあったのではないかとも されている」

 とはいえ、結果的に中国内の生産現場の劣悪さが改めて世界の知るところとなったわけで、“自爆”の感は否めない。

 同時に日米はじめ世界各国の食品産業が、中国の危うさをわかった上でコスト削減のために利用し続けていたという構図も明らかになった。

※週刊ポスト2014年8月15・22日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト
公金還流疑惑がさらに発覚(藤田文武・日本維新の会共同代表/時事通信フォト)
《新たな公金還流疑惑》「維新の会」大阪市議のデザイン会社に藤田文武・共同代表ら議員が総額984万円発注 藤田氏側は「適法だが今後は発注しない」と回答
週刊ポスト
“反日暴言ネット投稿”で注目を集める中国駐大阪総領事
「汚い首は斬ってやる」発言の中国総領事のSNS暴言癖 かつては民主化運動にも参加したリベラル派が40代でタカ派の戦狼外交官に転向 “柔軟な外交官”の評判も
週刊ポスト
黒島結菜(事務所HPより)
《いまだ続く朝ドラの影響》黒島結菜、3年ぶりドラマ復帰 苦境に立たされる今、求められる『ちむどんどん』のイメージ払拭と演技の課題 
NEWSポストセブン
初代優勝者がつくったカクテル『鳳鳴(ほうめい)』。SUNTORY WORLD WHISKY「碧Ao」(右)をベースに日本の春を象徴する桜を使用したリキュール「KANADE〈奏〉桜」などが使われている
《“バーテンダーNo.1”が決まる》『サントリー ザ・バーテンダーアワード2025』に込められた未来へ続く「洋酒文化伝承」にかける思い
NEWSポストセブン
公職上の不正行為および別の刑務所へ非合法の薬物を持ち込んだ罪で有罪評決を受けたイザベル・デール被告(23)(Facebookより)
「私だけを欲しがってるの知ってる」「ammaazzzeeeingggggg」英・囚人2名と“コッソリ関係”した美人刑務官(23)が有罪、監獄で繰り広げられた“愛憎劇”【全英がザワついた事件に決着】
NEWSポストセブン
立花孝志容疑者(左)と斎藤元彦・兵庫県知事(写真/共同通信社)
【N党党首・立花孝志容疑者が逮捕】斎藤元彦・兵庫県知事“2馬力選挙”の責任の行方は? PR会社は嫌疑不十分で不起訴 「県議会が追及に動くのは難しい」の見方も
週刊ポスト
超音波スカルプケアデバイスの「ソノリプロ」。強気の「90日間返金保証」の秘密とは──
超音波スカルプケアデバイス「ソノリプロ」開発者が明かす強気の「90日間全額返金保証」をつけられる理由とは《頭皮の気になる部分をケア》
NEWSポストセブン
三田寛子(時事通信フォト)
「あの嫁は何なんだ」「坊っちゃんが可哀想」三田寛子が過ごした苦労続きの新婚時代…新妻・能條愛未を“全力サポート”する理由
NEWSポストセブン
大相撲九州場所
九州場所「17年連続15日皆勤」の溜席の博多美人はなぜ通い続けられるのか 身支度は大変だが「江戸時代にタイムトリップしているような気持ちになれる」と語る
NEWSポストセブン
一般女性との不倫が報じられた中村芝翫
《芝翫と愛人の半同棲にモヤモヤ》中村橋之助、婚約発表のウラで周囲に相談していた「父の不倫状況」…関係者が明かした「現在」とは
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 高市首相「12.26靖国電撃参拝」極秘プランほか
「週刊ポスト」本日発売! 高市首相「12.26靖国電撃参拝」極秘プランほか
NEWSポストセブン