死に近づいたとき、病気で亡くなった両親や親戚、戦死した友人など故人に会ったという人は多い。いわゆる「臨死体験」というものだ。
ひとり暮らしをする棚橋良子さん(85才・仮名)は20年ほど前、心筋梗塞で倒れた際に幼なじみに会ったという。 「ひとりで真っ暗闇の中にいた私。とにかく出口を探して歩き続けていると、前のほうから幼なじみが手招きをしているのがわかりました。私は嬉しくなって、『○○ちゃん!』と声をかけたんですが、彼女は明るい場所で、何もしゃべらずニコニコ笑って立っているだけでした。
懐かしかったのでそっちへ行こうとしたとき、後ろから『おーい』と私を呼ぶ声がしたんです。誰の声だったのかわかりません。後ろを振り向いた途端、ドーン!とすごく大きな音と、稲妻のような衝撃が体の中を駆け抜けていきました。
どれくらい時間が経ったでしょうか。はっと目をあけると、家族が私の周りを囲んで心配そうにこちらを見ていました。私は病院のベッドの上に寝かされていたんです。暗闇の中で会った彼女は空襲で亡くなった友達でした」
アマゾンで臨死体験をしたというのは『看取り先生の遺言』(文藝春秋刊)著者でジャーナリストの奥野修司氏だ。
「1978年に仕事で南米・アマゾンに行ったとき、マラリアにかかってしまい40度以上の高熱にうなされ意識を失っていました。そのとき見たのは水の上に自分が水面すれすれに浮かんでいて、水平線の向こうでおじいちゃんか誰かが雲の上に乗っている光景。一緒に雲に乗っていたら死んでいたかもしれません。結局、現地の日本人が病院に連れて行ってくれて助かりました。3日3晩寝ていたそうです」
会社員の室田剛さん(42才・仮名)は、2年前、母親から亡くなる直前に「お迎えがきた」ことを告げられた。
「母は心臓が弱く最期は肺機能も低化して74才で亡くなりました。亡くなる前、『お父さんが迎えにきた』と言っていたんです。
病室に行くたびに『まだまだ死にたくない』と言っていたのに、ある日突然、『お父さんが昨日病室にきてくれたからもうすぐ一緒に行くよ。あんたがちゃんと育ってくれたからもう安心した。後のことは任せたよ』って。
いつ亡くなってもおかしくない病状だと医師に言われていたけれど、体調はいつもと特段変わっていない様子でした。
そして、翌朝突然眠るように安らかに亡くなったんです」
※女性セブン2014年8月21日・28日号