逆のことばかりやって日本企業の足を引っ張っている安倍首相は「(財布と胃袋のでかい)中国は使ってナンボ」ということをわかっていないのである。中国に代わる新興国市場が育っていない以上、国家間の政治的対立が日増しに高まる現状に対して、経済界から安倍首相に諫言するのが筋と思うが、政官財を含め、ますます「独裁者」の様相を呈してきている安倍首相に物言う人は現われていない。
一方、いま中国の国内情勢は緊張度を増している。習近平国家主席は「トラ(大きな腐敗)もハエ(小さな腐敗)も一緒に叩く」と反腐敗運動の大号令をかけ、政治生命を懸けて敵対勢力の江沢民一派を粛清しているが、これは両刃の剣で返り討ちに遭う可能性もある。そこで、すべての権限を自分1人に集約し、中国でも習近平「独裁体制」の構築が加速している。
不動産バブルの崩壊、新疆ウイグル自治区などのテロ、香港の行政長官選挙をめぐる大規模なデモといった国民の不満が大きなうねりになりつつあるので、習近平政権は(通常の任期である)10年はもたないと私はみている。
中国は国内情勢が悪化すればするほど国民の目を国外に向けようとするのが常套手段だから、安倍政権がそういう中国の事情を考慮せず、むしろ刺激するような現在の外交戦略を続ける限り、中国は日本に対する反発をいっそう強めるだろう。
※SAPIO2014年9月号