国内

雑誌広告に圧力かける朝日新聞 言論の自由を認めない体質も

 福島第一原発事故での吉田調書をめぐる誤報問題で、朝日新聞の木村伊量(ただかず)・社長が9月11日に謝罪会見を行なったが、木村氏は「自由な言論の場を保障する」と繰り返し強調した。

 朝日が本当に言論の自由を重んじてきたかを考えるうえで、本誌・週刊ポストをはじめ週刊誌の新聞広告に過剰に介入してきた問題は大きな意味を持つ。

 すでに朝日紙面などで報じられている通り、本誌は5月20日付の吉田調書報道を直後(6月9日発売号)から誤報と指摘し、真っ先に抗議書を送りつけられた。その後、朝日は本誌取材をすべて拒否し、さらに朝日に有料で掲載する本誌の広告に細々と注文をつけて圧力をかけてきた。

 それ以前からセックス特集の文言などに変更を要求されることは度々あったが(これはこれでおかしなことだが)、この間は介入がエスカレート。例えば、アーティスト・ろくでなし子氏が「わいせつ電磁的記録頒布」で逮捕されたことに疑義を呈した記事に対し、なんとメインタイトルを変更するよう申し入れてきたこともあった。

 そして、朝日が慰安婦報道の誤報を認めた後、本誌はその検証と反省が不十分であると追及を強めたところ、ますます態度を硬化させた。

 9月12日号の広告に対しては、より具体的に「『1日380人を相手』キャンペーン」との文言のうち、「キャンペーン」を「証言」に、「慰安婦の嘘」というメインタイトルを「嘘をついたわけではない」という理屈で「慰安婦の虚報」に変更するよう要請してきた。

 そのうえで「全体的な印象」に問題があるとして、広告掲載拒否の可能性があると通達してきたのである。

 本誌編集部では、読者に本誌内容を伝える機会を失うことは大きなデメリットと考えて、可能な修正には応じる意思を伝えたものの、記事の根幹に関わる変更を求められることは編集権への不当で過剰な介入であり、それ以上の要求には応じないことを申し渡した。すると、朝日上層部まで含めて協議した結果、発売2日前になって「掲載する」と連絡してきたのである。

 個人や、自分たちより小さなメディアに対しては言論の自由、批評の多様性を認めない体質が朝日の隅々にまで及んでいる疑いは拭えない。今後の対応を注視し、懸念すべき事実は改めて公開する。

※週刊ポスト2014年10月3日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

小磯の鼻を散策された上皇ご夫妻(2025年10月。読者提供)
美智子さまの大腿骨手術を担当した医師が収賄容疑で逮捕 家のローンは返済中、子供たちは私大医学部へ進学、それでもお金に困っている様子はなく…名医の隠された素顔
女性セブン
吉野家が異物混入を認め謝罪した(時事通信、右は吉野家提供)
《吉野家で異物混入》黄ばんだ“謎の白い物体”が湯呑みに付着、店員からは「湯呑みを取り上げられて…」運営元は事実を認めて「現物残っておらず原因特定に至らない」「衛生管理の徹底を実施する」と回答
NEWSポストセブン
北朝鮮の金正恩総書記(右)の後継候補とされる娘のジュエ氏(写真/朝鮮通信=時事)
北朝鮮・金正恩氏の後継候補である娘・ジュエ氏、漢字表記「主愛」が改名されている可能性を専門家が指摘 “革命の血統”の後継者として与えられる可能性が高い文字とは
週刊ポスト
英放送局・BBCのスポーツキャスターであるエマ・ルイーズ・ジョーンズ(Instagramより)
《英・BBCキャスターの“穴のあいた恥ずかしい服”投稿》それでも「セクハラに毅然とした態度」で確固たる地位築く
NEWSポストセブン
箱わなによるクマ捕獲をためらうエリアも(時事通信フォト)
「箱わなで無差別に獲るなんて、クマの命を尊重しないやり方」北海道・知床で唱えられる“クマ保護”の主張 町によって価値観の違いも【揺れる現場ルポ】
週刊ポスト
火災発生後、室内から見たリアルな状況(FBより)
《やっと授かった乳児も犠牲に…》「“家”という名の煉獄に閉じ込められた」九死に一生を得た住民が回想する、絶望の光景【香港マンション火災】
NEWSポストセブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(右/読者提供)
【足立区11人死傷】「ドーンという音で3メートル吹き飛んだ」“ブレーキ痕なき事故”の生々しい目撃談、28歳被害女性は「とても、とても親切な人だった」と同居人語る
NEWSポストセブン
「アスレジャー」の服装でディズニーワールドを訪れた女性が物議に(時事通信フォト、TikTokより)
《米・ディズニーではトラブルに》公共の場で“タイトなレギンス”を普段使いする女性に賛否…“なぜ局部の形が丸見えな服を着るのか” 米セレブを中心にトレンド化する「アスレジャー」とは
NEWSポストセブン
日本体育大学は2026年正月2日・3日に78年連続78回目の箱根駅伝を走る(写真は2025年正月の復路ゴール。撮影/黒石あみ<小学館>)
箱根駅伝「78年連続」本戦出場を決めた日体大の“黄金期”を支えた名ランナー「大塚正美伝説」〈1〉「ちくしょう」と思った8区の区間記録は15年間破られなかった
週刊ポスト
「高市答弁」に関する大新聞の報じ方に疑問の声が噴出(時事通信フォト)
《消された「認定なら武力行使も」の文字》朝日新聞が高市首相答弁報道を“しれっと修正”疑惑 日中問題の火種になっても訂正記事を出さない姿勢に疑問噴出
週刊ポスト
ラオスへの公式訪問を終えた愛子さま(2025年11月、ラオス。撮影/横田紋子)
《愛子さまがラオスを訪問》熱心なご準備の成果が発揮された、国家主席への“とっさの回答” 自然体で飾らぬ姿は現地の人々の感動を呼んだ 
女性セブン
山上徹也被告(共同通信社)
「金の無心をする時にのみ連絡」「断ると腕にしがみついて…」山上徹也被告の妹が証言した“母へのリアルな感情”と“家庭への絶望”【安倍元首相銃撃事件・公判】
NEWSポストセブン