駅員が来たら自分からも車内の状況を説明し、「名誉毀損で告訴するので、警察官を呼んでほしい」と伝える。長引きそうならその段階で会社に連絡をとり、「痴漢事件に巻き込まれたので、名誉毀損で告訴の手続きをする」と伝えておくべきだという。
「刑事訴訟法では告訴は口頭でも有効とされています。ただし巡査では受理することができない。巡査部長以上の階級の警察官に告訴調書を作成してもらう必要があります。
警察が来たら落ち着いて再び状況を説明し、手指などの微物検査をしてほしいと積極的に申し出る。加えて『不特定多数の人の前で“胸を触った”などと事実無根のことをいわれて名誉を傷つけられたので、この女性を告訴します。厳重に処罰してください』とはっきり告げましょう」(粂原氏)
痴漢事件では警察が女性の言い分を信頼し、逮捕に至ることが多い。録音などの証拠を集めて名誉毀損で告訴すると宣言することで、警察は「慎重に捜査したほうがいい」と考えるようになる。さらに自ら「微物検査をしてほしい」とまでいえば、現行犯逮捕にも慎重になる。
それでも不幸にして逮捕されたら、「名誉毀損です。女性も逮捕してください」「私だけ逮捕されるのは納得できない。弁護士を呼んでください」と訴え続けること。起訴され裁判になった場合に、そうして主張し続けていたことや録音などが無実を証明する材料になる。徹頭徹尾、自分の主張を曲げないことが大切だ。
もちろん、この方法が有効なのはあくまでも身に覚えがない場合である。
「本当は痴漢しているのに名誉毀損で告訴すると、条例違反または強制わいせつ罪に問われるのはもちろん、刑法172条の虚偽告訴罪になり、3か月以上10年以下の懲役という重い罪になります」(粂原氏)
法律知識は身を助けることがある。万が一のために覚えておいて損はない。
※週刊ポスト2014年10月17日号