ライフ

招聘した外国人医師が日本人患者を診療できないのはナゼか

「岩盤規制」が数多く残されている領域のひとつが「医療」である。厚労省、医師会、医療機関、製薬会社など様々な利権が複雑に絡みあうため、改革は容易ではない。しかし今、国家戦略特区法の枠組みを利用し、岩盤を打破するための試みが始まっている。政策工房社長の原英史氏が解説する。

 * * *
 我が国では、保険診療と保険外診療の併用(混合診療)が原則として禁止され、病床の新設・増設には、都道府県知事の許可が必要だが、昨年成立した国家戦略特区法では、「保険外併用療法」「病床規制」については特区内では特例的に緩やかな運用が認められることになっている。
 
 かつて政府の規制改革会議などの専門委員として活躍し、現在は、順天堂大学客員教授を務めるほか、医療法人社団滉志会代表として、免疫細胞治療を専門とする瀬田クリニックを率いる阿曽沼元博氏は、今年春に「東京圏」(東京都の一部・神奈川県・成田市)が特区の一つとして指定されたことを受け、特例をフル活用するつもりだ。
 
 ただ、特区制度を活用しても、現状では解決しきれない問題もある。
 
 同クリニックでは、国内の大学のほか、海外の研究機関と連携しての臨床研究も行なう。しかし、そうした海外機関の医師を国内の臨床研究に招こうとしても、現行制度では難しい。外国医師(外国で医師資格を取得している医師)の国内での診療は、例外的に「臨床修練制度」で認められている。
 
 だが、受け入れには様々な要件がある。例えば受け入れ機関は大学病院などに限定され、阿曽沼氏の運営するクリニックでは制度活用は難しい。
 
 もうひとつの例外は「二国間協定」に基づいて、相互に外国医師の診療を認めるケース。これまでイギリス・アメリカ・フランス・シンガポールの4か国と協定が結ばれ、例えばイギリス医師は7名(実際には4名来日)といった枠が設定されている。
 
 しかし、「イギリス医師はイギリス人の患者しか診ることができない」といった制約=オチがついている。
 
 特区内では特例的に、他国の外国人患者もみることができるようになったが、それでも日本人患者を診ることはできない。日本人患者が希望していてもダメというから、いかにも窮屈な仕組みである。
 
 グローバル化が進む中で、医療の世界でももっと世界の優れた人材を取り込む仕組みが検討されてしかるべきだ。

※SAPIO2014年11月号

関連キーワード

関連記事

トピックス

小林ひとみ
結婚したのは“事務所の社長”…元セクシー女優・小林ひとみ(62)が直面した“2児の子育て”と“実際の収入”「背に腹は代えられない」仕事と育児を両立した“怒涛の日々” 
NEWSポストセブン
松田聖子のものまねタレント・Seiko
《ステージ4の大腸がん公表》松田聖子のものまねタレント・Seikoが語った「“余命3か月”を過ぎた現在」…「子供がいたらどんなに良かっただろう」と語る“真意”
NEWSポストセブン
今年5月に芸能界を引退した西内まりや
《西内まりやの意外な現在…》芸能界引退に姉の裁判は「関係なかったのに」と惜しむ声 全SNS削除も、年内に目撃されていた「ファッションイベントでの姿」
NEWSポストセブン
(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせ女性インフルエンサーであるボニー・ブルー(AFP=時事)
《大胆オフショルの金髪美女が小瓶に唾液をたらり…》世界的お騒がせインフルエンサー(26)が来日する可能性は? ついに編み出した“遠隔ファンサ”の手法
NEWSポストセブン
日本各地に残る性器を祀る祭りを巡っている
《セクハラや研究能力の限界を感じたことも…》“性器崇拝” の“奇祭”を60回以上巡った女性研究者が「沼」に再び引きずり込まれるまで
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン