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中国で反日ドラマが多い理由 検閲通りやすく収益率高いため

 中国では人民に対する「反日教育」の一環として、反日映画・ドラマ(中国国内では「抗日片」と呼ぶ)が数多く製作されている。中国の人々の間でも大人気であり、日中関係に多大な影響を与えている。

 その実態を探るため、在中国ジャーナリストの西谷格氏が、「反日ドラマ」の製作現場に潜入した。

 * * *
 出演する中国人の役者はどういう思いで日本兵を演じているのだろう。待機時間に地べたに座りながら、雑談がてら話を聞いた。役者たちは20代がほとんどで、私が日本人だと伝えると興味津々で話しかけてきた。

 ひょろりとしたあどけなさの残る20歳の男性役者の話。

「高校を卒業してから友達に誘われて、何となくこの世界に入った。本当は時代劇とかをやりたいけど、日本兵役の方が需要が多い。

 抗日ドラマの日本兵を演じたからといって、それで日本を嫌いになることはないよ。とはいえ元々好きでも嫌いでもないけど。まあ、生活のためでもあるからね」

 映画村で撮影されている作品の半分以上が反日モノで、与えられる役のおよそ6割は日本兵役だという。

 表現の自由が著しく規制されている中国では「検閲審査に通りやすく、収益率が高い」という理由で反日作品が大量生産されている。そうした作品内で登場する多数の日本兵役が、役者たちの下積みの場となっているのだ。

 では過剰な表現手法についてはどう思っているのか。

「荒唐無稽すぎるものはバカバカしくて見る人はいない。でも、芝居なんだから多少の誇張や脚色はあって当然だよ」

 歴史的事実などというものは、彼らは大して興味がないらしい。何も考えずに悪辣な日本兵を演じているのだから、逆に恐ろしくもある。

 収入はどのぐらいなのか。

「日給100元(約1800円)ぐらい。月給にしたら3000元(約5万4000円)いかないぐらいかな」

 下積み時代の役者の生活が苦しいのは世界共通かもしれない。

 32歳の別の男性役者にも話を聞いたところ、環境や待遇は似た回答だったが一点、「日本のことは嫌いだよ。日本は戦時中、中国人に対してとてつもない大罪を犯したんだからな!」とステレオタイプに言い切っていた。

 20歳の役者のノンポリ然とした反応とは明らかに態度が異なる。これが世代の違いなのだろう。

※SAPIO2014年11月号

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