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角膜削らず矯正可能「眼内コンタクトレンズ」 専門医が解説

ICL(眼内コンタクトレンズ)について教えてくれた高柳芳記総院長

 近年さまざまな視力矯正法が登場しているが、その中のひとつ「ICL(眼内コンタクトレンズ)手術」(以下、ICL手術)は現在、年間約3000枚出荷されているという。「ICL手術は、眼科医として待ちに待っていた視力矯正法です」と語る北海道札幌市の眼科手術クリニック・カルナメドアイ総院長の高柳芳記先生に、ICL手術の術式やメリット・デメリットについて解説してもらった。

 * * *

――ICL手術とはどんなものですか?

 ICL手術とは、ソフトコンタクトレンズのような素材でできた、対角約12mmの柔らかいレンズを用いて、このレンズを眼の中、具体的には虹彩と水晶体の間に入れることにより近視などの屈折を矯正する治療方法です。

――具体的には、どんな手術をするのでしょう?

 角膜の外周に沿って3mmほど切開し、そこからレンズをインプラントします。黒目(虹彩)の後ろ側に固定しますので、どんなに近づいても外からはまったくわかりません。これまでの視力矯正手術と比べると、切開の範囲が非常に少ないので、患者さんへのダメージもかなり軽減されます。

――ICL手術のメリットには、どういった点が挙げられますか?

 大きく分けて3つあります。ひとつは見え方の質がレーシックに代表される角膜を削る視力矯正手術よりも優れており、安定していることが挙げられます。従来の方法よりも鮮明さ、コントラスト感に優れており、特に夜間光の周りにボワっと見えるハローやグレアが少ないことが挙げられます。

 ふたつめは、やり直しがきく、元に戻せるという安心感。従来の視力矯正手術の多くは「角膜を削る」ことが中心だったため、思うような結果が得られなかったとしても、もとに戻すことは不可能でした。また、加齢により老眼や白内障などで視力が変化した時にも対処しやすいことです。ICL手術の場合は、レンズを入れ替えることができますから、長期的な視力の変化や加齢などで生じる眼の疾患にも治療の選択肢を狭めることがありません。

 3つめは、近視矯正の幅が広がり、かなりの強度近視まで治療可能になったことです。レーシックでは大きな矯正を行なうほど角膜を多く削らなくてはいけないけれど、角膜の削れる量にはおのずから限界があるし、限界まで削って角膜が薄くなれば眼の強度も落ちてしまいます。つまり角膜を削る近視矯正手術では強い近視の矯正は不可能だし、またお薦めもできないのです。その結果、「強度の近視に悩む人ほど、角膜を削るような近視矯正が受けられない」というジレンマがありました。ところがICL手術の場合、コンタクトレンズと同じように乱視も含めてレンズの度数を選べますから、非常に強い近視でも矯正できるのです。

 さらに今年3月に承認された改良版のレンズでは、副作用や合併症が現時点でほぼ確認されていないこと。ドライアイを生じることも、グレア・ハローもほとんどありません。このニュータイプのICLレンズでは、眼内の房水がスムーズに流れるようになったため、手術に起因する白内障リスクもほぼゼロに近づいたというところも、使いやすくなったポイントです。

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