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欧米でガソリンは臭わない 日本が抱える問題を現職知事指摘

「エコ」の必要性が盛んに叫ばれるなか、日本では対策が遅れているどころか、その概念すらろくに周知されていない大きな環境問題がある。それが「ガソリンベーパー」(ガソリン蒸気)だ。この問題を重く見る現職神奈川県知事・黒岩祐治氏が『週刊ポスト』に寄せた原稿から、日本のガソリンベーパー問題の現状について紹介する。

 * * *
 ガソリンスタンドに行くと、何となくツーンと鼻をつくような独特な臭いがする。ガソリンスタンドとはそういうものだと、ほとんどの人は思い込んでいるに違いない。

 しかし、スタンドでの給油中の様子を特殊な赤外線カメラで撮影した映像を見て、私は言葉を失った。そこには臭いの元がしっかりと写し出されていたのである。肉眼では見えないが、映像では車の給油口から煙がモクモクと出ているのが確認できた。揮発したガソリンが給油口から漏れ出ているのである。これが「ガソリンベーパー」だ。

 ガソリンは揮発性なんだから当たり前、そんなに神経質にならなくてもいいんじゃないか。そんな声が聞こえてきそうだ。ところが、欧米では厳しい規制によりガソリンベーパー対策がとられていて、そうした臭いはしないという。しかも、日本の自動車メーカーでも、日本からアメリカに向けての輸出車にはガソリンベーパー対策が施されているという。

 たまたま県内企業を訪問したことにより、私はこの事実を知った。知った以上、見過ごしておくことはできない。今、何をなすべきなのか考えてみたい。

 ガソリンベーパーは自動車への給油時のほか、タンクローリーからガソリンスタンドへ卸すとき(荷卸時)にも漏れ出ている。また、自動車の走行時だけでなく、エンジンを止めて停止している間も大気中に放出されている。環境省の調査によると、全国の放出量は、燃料小売業(ガソリンスタンド)から年間約11万トン(平成24年度)と推計されている。これは1日当たりでは20キロリットルの大型タンクローリー約20台分に相当する。

 また、これとは別に、駐車時の車から年間3万トン程度が大気中に放出されているとの試算もある。

 ガソリン価格が上昇している中で、これだけのガソリンが無駄に放出されているのはあまりにもったいないし、なにより大気汚染につながって人体にとってもよくないことは明らかだ。

※週刊ポスト2014年11月7日号

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