この問題は、韓国の国家権力が加藤氏、産経新聞に対してかけた弾圧にとどまらず、日本のマスメディア、記者、表現者(その中には筆者も含まれる)全体に対する挑発である。加藤氏の起訴によって、韓国は報道の自由を保障できない、国際基準での標準的価値観を共有できない国だという認識が世界的規模で拡大している。韓国内にも加藤氏の起訴は行き過ぎだという意見もあるが、政府のみならず世論の多数派はこの起訴を支持している。
日本外務省は、今回、韓国から売られた喧嘩を買っている。問題を国際化し、日本人を狙い撃ちにした弾圧を続ければ続けるほど、国際社会における韓国の信用が失墜することになるという状況を作り出すのが、外務省の戦略のようだ。
〈岸田文雄外相は16日の参院外交防衛委員会で、産経新聞の加藤達也前ソウル支局長がソウル中央地検に在宅起訴され、出国禁止措置が3カ月延長されたことについて、人道上の問題があるとして国連人権理事会への問題提起を検討する考えを示した。
岸田氏は国連人権理事会の下に、全ての国連加盟国を対象に人権状況を審査する作業部会があることに言及し、加藤前支局長の人権状況について「(所見を述べる)適当な機会があるかどうか検討してみたい」と述べた。〉(16日、「産経新聞ニュース」)。
国連人権理事会では、慰安婦問題で日本が韓国から批判される場合が多いが、このような場を用いて、韓国による日本人記者を狙い撃ちにした不当な人権侵害がなされていることをアピールすると、大きな効果が期待される。是非、実施して欲しい。岸田外相は、〈邦人保護の観点から加藤前支局長の「身辺の安全確保」を韓国政府に求めていることも明らかにした。〉(同前)。
今回、加藤記者の自由を回復するために、外務省は頑張っているが、韓国は、そう簡単に譲歩しないであろう。
※SAPIO2014年12月号