ビジネス

営業部はバカではない 「営業こそがブランドを創る」と識者

 就活で学生に不人気に職種の代表は「営業」だろう。なんとなく泥臭くてしんどいイメージがある。営業の真の姿とはどうなのか。どうあるべきなのか。1冊の本をきっかけに作家で人材コンサルタントの常見陽平氏が考える。

 * * *
 営業。

 世の中の多くの人が営業職をしているのにも関わらず、これほど誤解されている職業もないのではないかと思ってしまいます。よくドラマなどではゴリ押しする、あるいはやたらとペコペコするイメージで描かれますよね。この職業の実態はどうなっているのでしょうか?

 そんな営業職の実態を捉え、その魅力と、強い営業とは何かを実にわかりやすく、絶妙なバランスで描いた本が登場しました。『営業部はバカなのか』(北澤孝太郎 新潮新書)です。

 予想がついた方もいらっしゃるかと思いますが、営業部はバカではないということを描いた本です。そもそも、バカかどうかの議論はほとんど出てきません。むしろ、営業という仕事がいかに深いかということがよく分かる本です。このあたりの、絶妙なタイトル設定と、内容のキャッチーさと深さの両立は、さすが最近ヒットが多い新潮新書という感じです。

 毎年、就活を始めたばかりの学生と話すと首を傾げてしまう瞬間があります。

「えっと、僕は、クリエイティブな仕事がしたいので、営業とかよりも、企画の仕事をしたいっす」

 みたいなことを言うわけですよ。こういう学生に限って、ちょっと広告研究会なんかに入っていて、でも学生時代に力を入れたことといえば先輩の代から毎年決まっている学園祭の企画に取り組んだくらいで、話も別に面白くないのですけどね。

「現場のニーズを掴んで、それを商品・サービスに落としこむような仕事をしたいです」

 なんてことを言うわけですよ。それって、営業の仕事じゃないですか。そう、実は営業の仕事には、商品・サービスに現場のニーズを反映させていく、一緒につくっていくという要素もあるのですね。これくらい、営業の仕事は理解されていません。

 ただ、無理もないです。皆さん、この職業をどう説明しますか?英訳するとしたならば、どうなりますか?私、これは、簡単そうで難しいと思うのですよ。以前の職場で、「営業にかわる肩書きを考えよう」というプロジェクトが実際にあったわけですが、その時はいったん「営業のままでいく」ということで着地しました。というのも、仮に英語で表現しようとしたところで、あまりに業務内容が幅広く、うまく表現できないのです。営業と一言で言っても、同じ企業の中でも新規開拓中心か、既存顧客が相手か、顧客は法人なのか個人なのか、扱っている商品・サービスは何なのか、単価は高いのか低いのかなどによっても仕事内容は違いますからね。

 この本は、実にわかりやすく、営業とは何か、果たすべき役割は何なのか、強い営業とは何かを説明しています。

 個人的に、秀逸だなと思った点の一つは、営業活動とは何かという定義です。ややネタバレですが、著者の北澤孝太郎氏は次のように定義しています。

 営業活動=新しい価値創り+ブランド構築や広告宣伝+セールス活動

 いかにも営業っぽい、セールス活動以外の活動に注目です。これは、まさにクリエイティブであり、頭を使う要素だとは思いませんか。個人的には、この定義に「ブランド構築」という要素が入っている点は注目すべきかと思います。「新しい価値創り」に関しては、よく現場のニーズを商品・サービスに反映させて行くのは営業の仕事というふうに説明されますからね。営業活動を通じて、商品・サービスや、もっと言うならば企業のブランドは創られていくのです。

関連キーワード

関連記事

トピックス

司組長が到着した。傘をさすのは竹内照明・弘道会会長だ
「110年の山口組の歴史に汚点を残すのでは…」山口組・司忍組長、竹内照明若頭が狙う“総本部奪還作戦”【警察は「壊滅まで解除はない」と強硬姿勢】
NEWSポストセブン
バスツアーを完遂したイボニー・ブルー(インスタグラムより)
《新入生をターゲットに…》「60人くらいと寝た」金髪美人インフルエンサー(26)、イギリスの大学めぐるバスツアーの海外進出に意欲
NEWSポストセブン
横山剣氏(左)と作曲家・村井邦彦氏のスペシャル対談
《スペシャル対談・横山剣×村井邦彦》「荒井由実との出会い」「名盤『ひこうき雲』で起きた奇跡的な偶然」…現代日本音楽史のVIPが明かす至極のエピソード
週刊ポスト
大谷が購入したハワイの別荘の広告が消えた(共同通信)
【ハワイ別荘・泥沼訴訟に新展開】「大谷翔平があんたを訴えるぞ!と脅しを…」原告女性が「代理人・バレロ氏の横暴」を主張、「真美子さんと愛娘の存在」で変化か
NEWSポストセブン
小林夢果、川崎春花、阿部未悠
トリプルボギー不倫騒動のシード権争いに明暗 シーズン終盤で阿部未悠のみが圏内、川崎春花と小林夢果に残された希望は“一発逆転優勝”
週刊ポスト
ハワイ島の高級住宅開発を巡る訴訟で提訴された大谷翔平(時事通信フォト)
《テレビをつけたら大谷翔平》年間150億円…高騰し続ける大谷のCMスポンサー料、国内外で狙われる「真美子さんCM出演」の現実度
NEWSポストセブン
「第72回日本伝統工芸展京都展」を視察された秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年10月10日、撮影/JMPA)
《京都ではんなりファッション》佳子さま、シンプルなアイボリーのセットアップに華やかさをプラス 和柄のスカーフは室町時代から続く京都の老舗ブランド
NEWSポストセブン
兵庫県宝塚市で親族4人がボーガンで殺傷された事件の公判が神戸地裁で開かれた(右・時事通信)
「弟の死体で引きつけて…」祖母・母・弟をクロスボウで撃ち殺した野津英滉被告(28)、母親の遺体をリビングに引きずった「残忍すぎる理由」【公判詳報】
NEWSポストセブン
焼酎とウイスキーはロックかストレートのみで飲むスタイル
《松本の不動産王として悠々自適》「銃弾5発を浴びて生還」テコンドー協会“最強のボス”金原昇氏が語る壮絶半生と知られざる教育者の素顔
NEWSポストセブン
部下と“ラブホ密会”が報じられた前橋市の小川晶市長(左・時事通信フォト)
《黒縁メガネで笑顔を浮かべ…“ラブホ通い詰め動画”が存在》前橋市長の「釈明会見」に止まぬ困惑と批判の声、市関係者は「動画を見た人は彼女の説明に違和感を持っている」
NEWSポストセブン
バイプレーヤーとして存在感を増している俳優・黒田大輔さん
《⼥⼦レスラー役の⼥優さんを泣かせてしまった…》バイプレーヤー・黒田大輔に出演依頼が絶えない理由、明かした俳優人生で「一番悩んだ役」
NEWSポストセブン
国民スポーツ大会の総合閉会式に出席された佳子さま(10月8日撮影、共同通信社)
《“クッキリ服”に心配の声》佳子さまの“際立ちファッション”をモード誌スタイリストが解説「由緒あるブランドをフレッシュに着こなして」
NEWSポストセブン