これを現実の数字(2012年)に移すと、日本の貧困ラインは122万円。世帯人数による調整後では親子2人世帯で年約173万円、4人世帯で約244万円となり、これは児童手当等も含んだ額だ。つまり日本は月14万~20万円未満で生活費も教育費も賄う家庭の子どもが6人に1人おり、さらにその半数の約160万人の子どもは月10万~15万円未満の家庭で暮らしているという。

 問題はその数字が〈引いて足す〉、所得再分配政策の結果を映す点で、貧困率が高くとも社会保障の充実で最悪の事態を回避する国は欧州に多い。親にどんな事情があれ、子どもには最低限の生育環境を社会が保障する制度を保持しているというわけだ。

「通常こうした支援は現金給付と現物給付の両建てですが、僕は現金給付に賛同が得られないなら、当面は保育所の拡充や就学援助といった現物の充実でもいいと思う。例えば日本の国立大学の授業料は30年で14倍に増え、年間50万円以上かかります。大学はおろか、中には『言う通りにしないと高校に行かせない』と親に脅される子すらいて、どんな家に生まれるかで人生はガラリと変わるのです」

〈家族とは脆い制度であると、児童相談所の経験を通じて感じています〉とある。ところが〈「家制度」に胡坐をかく〉日本では、貧困も虐待も、その家族制度のしがらみの中で連鎖する。

「特に高度成長以降、日本の家族はより小さな単位に囲い込まれ、親戚も地域も助けてくれない閉鎖的空間に変質した。元々日本では貧困に関して〈自己責任論〉が強く、全部親の責任なんですね。僕の実感では虐待する親や子育てのできない親は昔から当たり前にいて、海外ではキリスト教の影響か、実の親がダメなら別の親を探す例も珍しくない。つまり子どもは〈社会の子ども〉という考え方で、ここが根本的に異なります」

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