国内

解散・総選挙 財務省と経産省との官邸主導権巡る暗闘が発端

 国民にはまるでキツネにつままれたような解散・総選挙だ。なぜこの時期に? 何の目的で? 景気を良くするほうが先じゃないのか?

 疑問だらけの解散劇は、表面的には読売新聞が11月9日付朝刊1面で「増税先送りなら解散」と報じたところからスタートした。そこから大新聞各紙やテレビで「解散」の文字が躍り始めた。

 実は、「解散」はこの1~2週間で急に浮上した話ではない。まず発端には、官邸を経済産業省と財務省のどちらが牛耳るかという霞が関内の暗闘があった。

 争いは、谷垣禎一氏が9月の人事で党内ナンバー2の幹事長に復権したことから始まった。景気悪化で安倍首相のブレーンから消費税率10%への再増税先送り論があがる中、自民党総裁時代に民自公の「3党合意」で消費増税を決めた谷垣氏は「法律に規定されている引き上げが基本路線だ」と予定通り10%に引き上げることを強硬に主張した。

 緊張が高まったのは、閣僚の相次ぐスキャンダルで安倍政権の求心力がガクンと弱まってからだ。

「安倍総理には消費税10%まで実施してもらって勇退いただき、次は谷垣さん」

 財務省に近い自民党議員たちから半ば公然とそうした声があがった。財務省の官僚たちも、「重要な話は誰をおいても谷垣幹事長とOBの野田(毅・自民党税調会長)さんの耳に入れるようにしている」(同省中堅)と「谷垣詣で」を繰り返した。財務省が谷垣氏の存在を利用して発言力を増してきたのである。

 それに対して官邸側が「窮余の一策」として煽り始めたのが増税先送りとセットにした解散論なのだ。

「その中心が経産省出身の今井尚哉・政策秘書官。経産省は今井氏を先頭に官邸をガッチリ握っているが、もし谷垣氏に政権が代われば権力を失う。今井氏らは安倍総理に、ここは解散で逆風をリセットすべきだと強く進言していた。このままでは財務省に使い捨てにされると考えた大臣待望組の総理側近たちも、『今ならまだ勝てる』と解散で長期政権に活路を見いだそうと積極的にメディアへ情報をリークした」(官邸スタッフ)

 大メディアで解散情報を煽ったのが“安倍政権のご意見番”で再増税に慎重な立場とされる渡辺恒雄氏が率いる読売グループだ。まず内閣官房参与の飯島勲氏が読売テレビの番組(11月2日)で「12月14日投票」の解散情報をいち早く流し、冒頭のように9日の読売新聞報道で解散の流れを決定づけた。

 側近と大メディアが煽る中、安倍首相はついに「伝家の宝刀」を抜く。そこにあるのは周囲の思惑に乗った上で、目の前にある失政に国民が気付かないうちに選挙に打って出ようという打算と誤魔化しである。

※週刊ポスト2014年11月28日号

関連記事

トピックス

交際中のテレ朝斎藤アナとラグビー日本代表姫野選手
《名古屋お泊りデート写真》テレ朝・斎藤ちはるアナが乗り込んだラグビー姫野和樹の愛車助手席「無防備なジャージ姿のお忍び愛」
NEWSポストセブン
破局した大倉忠義と広瀬アリス
《スクープ》広瀬アリスと大倉忠義が破局!2年交際も「仕事が順調すぎて」すれ違い、アリスはすでに引っ越し
女性セブン
イエローキャブの筆頭格として活躍したかとうれいこ
【生放送中に寝たことも】かとうれいこが語るイエローキャブ時代 忙しすぎて「移動の車で寝ていた」
NEWSポストセブン
伊藤沙莉は商店街でも顔を知られた人物だったという(写真/AFP=時事)
【芸歴20年で掴んだ朝ドラ主演】伊藤沙莉、不遇のバイト時代に都内商店街で見せていた“苦悩の表情”と、そこで覚えた“大人の味”
週刊ポスト
大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
中国「抗日作品」多数出演の井上朋子さん
中国「抗日作品」多数出演の日本人女優・井上朋子さん告白 現地の芸能界は「強烈な縁故社会」女優が事務所社長に露骨な誘いも
NEWSポストセブン
大ヒット中の映画『4月になれば彼女は』
『四月になれば彼女は』主演の佐藤健が見せた「座長」としての覚悟 スタッフを感動させた「極寒の海でのサプライズ」
NEWSポストセブン
国が認めた初めての“女ヤクザ”西村まこさん
犬の糞を焼きそばパンに…悪魔の子と呼ばれた少女時代 裏社会史上初の女暴力団員が350万円で売りつけた女性の末路【ヤクザ博士インタビュー】
NEWSポストセブン
大谷翔平
大谷翔平、ハワイの25億円別荘購入に心配の声多数 “お金がらみ”で繰り返される「水原容疑者の悪しき影響」
NEWSポストセブン
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
女性セブン
伊藤
【『虎に翼』が好発進】伊藤沙莉“父が蒸発して一家離散”からの逆転 演技レッスン未経験での“初めての現場”で遺憾なく才能を発揮
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン