アメリカの意図は、経済的な結びつきを強めるドイツを筆頭とする欧州とロシアの関係を分断することにあった。ウクライナの親露的な政府を転覆させるために、右翼勢力に資金援助を行なったのである。その結果、(腐敗はしていたが)民主的に選ばれた政権が、クーデターによって倒された。欧州各国はアメリカのやり口を好ましくないと思いつつも、アメリカに従ってロシア制裁の道を選択してしまった。

 日本ではそうしたアメリカのプロパガンダがそのまま、官僚やメディアによってバラ撒かれた。「プーチン大統領は『悪』で、世界にとって脅威だ」と情報操作され、多くの日本人はそれを信じてしまっているのだ。

 戦後70年、日本政治のトップを占めるエリートたちは、アメリカの要求や要望に対して、時折反抗的な態度を見せながらも、最終的には隷属国としての振る舞いから外れないように政策決定してきた。安倍政権はそうした慣習を忠実に守っている。

 アメリカの権力者にとっては冷戦時代のような緊張状態は大変好ましいもので、「旧敵は決して消滅していない」と西側諸国に信じさせたい。だが、そうした緊張状態はいとも簡単に武力衝突を招き、世界に不幸をもたらす。日本人はそんな事態を本当に望んでいるのだろうか。

【プロフィール】1941年、オランダ生まれ。ジャーナリスト、政治学者。NRCハンデルスブラット紙の東アジア特派員、日本外国特派員協会会長を歴任。『日本/権力構造の謎』『人間を幸福にしない日本というシステム』などのベストセラーで知られる。

※週刊ポスト2014年11月28日号

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