白い歯をのぞかせた武田の右隣りで千葉が、「なんか、楽しそうだったんですよね」とつぶやくと、左に立つ中牟田も、「それを追いかけてみてもいいかなと思って」と、はにかんだ。
しかし、本人たちが”売れている”と実感できたのはわずか4か月ほど。その後は、井上陽水、荒井由実、小椋佳、小田和正というニューミュージックの潮流に飲み込まれていった。
「天国から地獄に真っ逆さまってやつです。どこの会場も超満員で“これ全部、俺達の客だ”と喜んでいたら、ある日、スッと影が差し始めて。あれっと思ったときには、その影がどんどん拡がっていた。『あんたが大将』が売れるまでの4年間は、ドン底を這いまわっていましたね」(武田)
仕事は月に1本あればいいほう。見栄も外聞も捨ててキャバレーで歌ったり、時には、地方の流水プールの脇で歌ったこともあった。
「水着のおねえちゃんがいっぱいいると喜んだけど、歌っても歌ってもお客は流れていくばかり。いったい、誰に向かって歌っているんだと(笑い)。哀しい思い出ばかりですが、あの時代があったから今がある──そう思っているんです」(同前)
◆海援隊13年ぶりのオリジナルアルバム『去華就実~花散りて次に葉茂り実を結ぶ~』は絶賛発売中(通常版・3000円+税、アルバム未収録シングル8曲を含むデラックス版・4000円+税)。
撮影■二石友希
※週刊ポスト2014年11月28日号