ビジネス

中小下請け 賃上げしようとすると大企業から製品値下げ圧力

 全国労働組合総連合(全労連)が中小企業を中心とする組合を対象に行なった今冬のボーナス調査の途中経過の数字は67万8441円(経団連調査の大企業平均は89万3538円)、平均して昨年よりダウンとなり、大手企業との差は歴然だ。

 特に地方では中小企業に疲弊の色が濃い。岩手県花巻市にある醤油・味噌の醸造元、佐々長醸造の佐々木博社長はこう語る。

「地方の中小企業の場合は、夏冬のボーナスが支給できるだけで優良企業扱いになりますよ。うちはなんとか少ないながらボーナス額を維持できているが、地域の経営者の集まりでは従業員のために借金してボーナスを支給している社長もいると聞きました。社員が大企業のボーナス増のニュースを見てどう思っているかを考えると胸が詰まる」

 また中小企業の場合、少しくらい儲かってもボーナスに反映しにくいという。経済ジャーナリストの溝上憲文氏が語る。

「例えば下請けが給料やボーナスを上げたら、大企業から『賃金アップの余裕があるならもう少し安く受注しろ』といわれかねない。そういう無言の圧力もあってそもそも賞与・賃金が上がりにくい構造なんです」

 埼玉県川口市で鋳物製造を行なう石川金属機工では冬のボーナスは昨年から10%カットになるという。

「それでも会社はまだ厳しい。いらない資産を売却し、66歳以上の従業員の給料を大幅に下げさせてもらってなんとかもたせている」(石川義明・社長)

 見逃してはならないのは物価上昇だ。総務省が10月末に発表した9月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除く)は前年同月から3.0%上昇し、上昇は16か月連続となった。

「大企業の5.78%増なら『ボーナスが増えた』といえますが、据え置きになる中小企業は実質的なボーナスカットです」(前出・溝上氏)

 大企業の中にも、実質では減額になってしまうところも実は多い。まさに見せかけのボーナスアップなのだ。

※週刊ポスト2014年12月5日号

関連キーワード

トピックス

AIの技術で遭遇リスクを可視化する「クマ遭遇AI予測マップ」
AIを活用し遭遇リスクを可視化した「クマ遭遇AI予測マップ」から見えてくるもの 遭遇確率が高いのは「山と川に挟まれた住宅周辺」、“過疎化”も重要なキーワードに
週刊ポスト
韓国のガールズグループ「AFTERSCHOOL」の元メンバーで女優のNANA(Instagramより)
《ほっそりボディに浮き出た「腹筋」に再注目》韓国アイドル・NANA、自宅に侵入した強盗犯の男を“返り討ち”に…男が病院に搬送  
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(AFLO/時事通信フォト)
「“穴持たず”を見つけたら、ためらわずに撃て」猟師の間で言われている「冬眠しない熊」との対峙方法《戦前の日本で発生した恐怖のヒグマ事件》
NEWSポストセブン
ラオスに到着された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月17日、撮影/横田紋子)
《初の外国公式訪問》愛子さま、母・雅子さまの“定番”デザインでラオスに到着 ペールブルーのセットアップに白の縁取りでメリハリのある上品な装い
NEWSポストセブン
ドジャース入団時、真美子さんのために“結んだ特別な契約”
《スイートルームで愛娘と…》なぜ真美子さんは夫人会メンバーと一緒に観戦しないの? 大谷翔平がドジャース入団時に結んでいた“特別な契約”
NEWSポストセブン
山上徹也被告の公判に妹が出廷
「お兄ちゃんが守ってやる」山上徹也被告が“信頼する妹”に送っていたメールの内容…兄妹間で共有していた“家庭への怒り”【妹は今日出廷】
NEWSポストセブン
靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン
俳優の仲代達矢さん
【追悼】仲代達矢さんが明かしていた“最大のライバル”の存在 「人の10倍努力」して演劇に人生を捧げた名優の肉声
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト