臼杵といえば、岩壁に彫られた磨崖仏(まがいぶつ)「国宝臼杵石仏」が名高い。平安から鎌倉時代にかけて造営された60余体のうち、59体が国宝に指定されている。なかでも、胴体から切り離された大日如来の仏頭が台座に安置された「古園(ふるぞの)石仏」の強烈な光景をご記憶の方も多いのではなかろうか。コンシェルジュもそうだった。ところが、今回再訪して驚いた。首がつながっていたのだ!
じつは平成5年に復元されたのだが、復元後にお参りした人が会社のリストラの危機を乗り越えたとのウワサが広まり、いまでは「首がつながった」=「リストラ除けに御利益のある仏様」として訪れる人が後を絶たないのだそうだ。これだけでも臼杵を訪れる価値があるだろう。
さて、お参りが済んだらようやくフグである。その前に、なぜ臼杵でフグなのか? 豊後水道の荒波でもまれたトラフグは身が引き締まり、甘みと歯ごたえが素晴らしい。ところが、同じ豊後水道のフグでも下関に揚がったものはブランド魚として高値で取引されるが、臼杵に揚がったものはリーズナブルな値段でいただけるというワケである。
今回伺うのは臼杵市内の『料亭 山田屋』。店の名を聞いてピンときた人もいるかもしれない。ここは東京・西麻布に出店し、『ミシュランガイド東京・横浜』で3つ星を3年間キープし続けている名店の本店である。globe(グローブ)のヴォーカリストで現在病気療養中のKEIKO嬢の実家でもある。
西麻布店は「ふぐコース」が一人前約2万円~という高級店なのだが、ここ本店では一人前7560円(別途サービス料10%)という『ふぐミニコース』を提供している。「ミニ」といっても、天然トラフグの神髄がたっぷり味わえる内容だ。
まずは「フグ刺し」。この店の、というより臼杵のフグ刺しは、一般的なものに比べると少し厚めに切られている。朝に水揚げされたばかりの鮮度抜群の天然トラフグだからこそできる芸当だろう。コリコリとした歯ごたえが堪らない。「フグ刺しは薄いほど美味い」なんていう俗説が見事に打ち砕かれる瞬間である。その後も、唐揚げやちり鍋~雑炊と、幸せなフルコースが続く。お伴は、ひれ酒(972円)で決まり!
満腹になって別府に戻ったら、帰路の空港行きのバスが出る夕方5時過ぎまで温泉でのんびりしよう。竹瓦温泉の砂湯もいいが、バスで約15分の鉄輪(かんなわ)温泉の足蒸しや足湯もおすすめだ。
帰りのジェットスター・ジャパン便は、成田に夜8時半過ぎに到着。1泊2日で極上の天然トラフグを堪能し、名湯に癒やされ、ついでにリストラ除けまでして、さあ明日からまた仕事ガンバロウ!
■鳥海高太朗(とりうみ・こうたろう)/千葉県富津市生まれ。航空・旅行アナリスト、帝京大学理工学部航空宇宙工学科非常勤講師。文化放送「オトナカレッジ」に「トラベル学科」講師としてレギュラー出演中(毎週金曜日20時~)。著書に『That’s ANA マニュアル ANA 公式ガイドブック』『エアラインの攻防』など。1年間のフライト数は100以上。
※週刊ポスト2014年12月26日号